SPIRAL CHAIR by Yui Kitamura
首都大学東京 システムデザイン学部 インダストリアルアートコース
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日常の中で誰にでもできる行為として、ものを巻くことに焦点を当て、高度な道具を使う技術や詳細な図面を書く知識を必要としない、誰でも作れる椅子の制作を目指した。これまでとは異なるアプローチで椅子を制作することで、新しい体験価値を持つ椅子の制作に繋がるとともに、椅子に限らず、ものを作ることへの新たなきっかけになると考えている。
ものを巻くという行為は、「巻くもの」と「巻き方」の二つの要素の掛け合わせで成り立っている。巻くものには更に「巻くものの形」「素材の厚み」「素材の硬さ」の三つの要素がある。また、巻き方も同様に更に二つの要素を持つ。一つは「巻きつける」のように巻き始めに異なる素材でできた芯があるものや、「丸める」のように一つの素材だけで巻き進めていくものといった芯の有無。もう一つは、トイレットペーパーのように巻くもの辺を揃えて巻くのか、それともズラして巻いていくのかということである。それぞれの要素のパラメータを変えることで、ものを巻くという単純な行為から様々に異なる造形が生まれる。 試作を重ね、椅子になりうる造形やものを巻くことの特徴を活かした造形を模索した。その中で、巻くものと巻き方の組み合わせは変えず、同じ形同じ巻き方を用いて、異なる造形を生み出すことのできるものを選択している。
制作に使用した素材は、主に防音材などとして用いられているゴムスポンジというものである。一本の長いシートを巻いて椅子を作るため、長さ1000mmのシートを接着剤で繋げている。
最終成果物として、大きさと素材の硬さが違う椅子を3脚制作した。大きいものが直径1000mm程度の大きさになっており、大人の使用を想定しており、小さいものは直径600mm程度の子供サイズとして考えている。
本研究で制作した椅子においては、ゴムスポンジを巻いて形を作り、椅子として座れるだけの強度を出すために接着剤で補強しているため、形の可変性に劣ることや、座りやすさの面で改善すべき点があるため、今後も機会があれば、ものを巻くことに着目した椅子の制作を続けていければと考えている。
words: Yui Kitamura
CREDIT
作品名:スパイラルチェア/Spiral Chair
研究タイトル:ゴムスポンジを用いたロッキングチェアのデザインと制作
氏名 :北村 唯
学校名:首都大学東京 システムデザイン学部 インダストリアルアートコース
卒業年:2020