深層に巡る by Miki Harada
武蔵野美術大学大学院 造形研究科修士課程デザイン専攻 建築コース
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私たちを取り囲む空間は、ただ一次元的に成り立っているのではない。 空気中に含まれる水滴や、蓄積した時間。そうした目には見えないが確かに存在する物たちが、 細かに連動し合いながら空間は形作られている。
昨年訪れた高野山奥之院や伊勢神宮で、私はこのことをより確かに感じた。 私はその場を歩きながら、その場に満ちる小さな一点一点に気付かされ、またそれらが作り出す うねりと一体となっていくような感覚を得た。こうした感覚は、入り口から奥へ、自分の体と時 間を使って歩く、という過程を通して形作られたものであると私は考える。常に連続するもう少 し先への予感、歩きながら気付かされる光や陰影、木々の向こうから伝わってくる遠くのざわめ き。そういった一つ一つの要素が私をより深く空間の中に没入させ、また今は見えない遥か先の どこかへのイメージを形作っていた。
今回の作品ではこうした、ある過程を通して一つのイメージが形作られる瞬間をテーマに制作 を行った。前半部分の細い通路では、死角になった前方から伝わる気配を辿りながら先へ進み、 最後の空間では時間や重力やパーソナリティといったようなものから離れ、ただ作品の世界と一 体となっていく瞬間を目指した。
words: Miki Harada
CREDIT
作品名:深層に巡る
rotates in the depth
氏名 :原田実季
学校名: 武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程デザイン専攻建築コース
卒業年:2021
応募カテゴリー:インスタレーション