AESOP Newoman Yokohama by TORAFU ARCHITECTS
Retail | Yokohama, Japan
DESIGN NOTE
藍染による海の表現
曲面を描く、自立した青い壁
自然を感じさせる、天然藍の利用
photography : Courtesy of Aesop
words : Reiji Yamakura/IDREIT
トラフ建築設計事務所がインテリアデザインを手掛けた、オーストラリアのスキンケアブランド「Aesop」のニュウマン横浜店。藍染による青いマテリアルを多用したデザインについて、「横浜という立地から、海、赤レンガなどいくつかのイメージを検討し、最終的に、藍染を用いて海の青を表現しようと試みました」とトラフ建築設計事務所を率いる鈴野浩一と禿真哉は語る。
これまで国内外で13店ほど設計を手掛けてきたAesopの店舗では、彼らは“ワンマテリアル、ワンストア”をテーマにデザインしてきたと言う。「この店舗では、僕たちは、『逆アプローチ』と呼んでいるのですが、デザインコンセプトから考えるのではなく、素材を決めることから全体を構想していきました。Aesopの店舗では1店ごとに異なるデザインが期待されているので、与件を考慮した上で、素材から考えていく手法を積極的に実践しているのです。今回は、塗装とは異なる青の表現を求め、かつて協働したことのあった、藍の栽培から染色、製作まで一貫して行っているBUAISOUに協力を依頼しました。製作過程で、阿波藍で知られる徳島県上坂町にある彼らのスタジオを施工者と共に訪れたことで、工事はスムーズに進行しました」と振り返る。また、これまでファッションの素材や小物を染めることが中心だったBUAISOUにとって建材の扱いは初めてであり、既存の槽ではサイズが足りず、壁材を一本丸ごと浸せる特注のステンレス槽を特注して送ることで希望のデザインを可能にしたという。
樹種は、テストして相性の良かったメープルを採用。一枚一枚丁寧に染め上げたことで、刷毛塗り後に拭き取る染色方法とは異なる風合いを実現している。
「画一的な素材には無い素朴さと力強さがあるこの仕上げにより、人の手や自然の力を感じさせる、おおらかな店舗空間を目指しました」という彼らは、奥行きが16mある細長い店内に、船体のように緩やかなカーブを描く壁を立てた。壁面の藍染した材は、自然に生まれる色ムラを生かし、現場で色の濃さや節の位置が適度にばらつくよう配置したという。その結果、開口部から自然光が入る店内は、昼夜で表情の異なる美しいグラデーションを見せる。また、ディスプレイテーブルとベンチの天板は、フラットな天板に対し、裏側は船底のように中央部が厚くなる形状に、チューブ型の商品を置く什器は、波状断面の新たなデザインがなされている。ディスプレイテーブルの腰や、シンクにはバイブレーション仕上げしたステンレスを用い、木部の藍色がほど良く映り込むようにしたという。
かつて手掛けた渋谷店同様、トラフ建築設計事務所がオリジナルデザインしたメープル材製の手鏡も藍で染め、開業時にはスタッフが藍染のエプロンを着用するなど、インテリアにとどまらず、顧客が触れる細かな部分にまで、海から想起した “藍染”を活用し、この店舗らしさを伝える仕掛けが展開された。
(文中敬称略)
DETAIL
CREDIT + INFO
名称:イソップ ニュウマン横浜店
設計:トラフ建築設計事務所
鈴野浩一 禿真哉 坂根みなほ
照明計画:BRANCH LIGHTING DESIGN
家具:カリモク
藍染:BUAISOU
施工:D.BRAIN
所在地:神奈川県横浜市西区南幸 1-1-1 ニュウマン横浜4F
経営: イソップ・ジャパン株式会社
用途:物販店
開業:2020年6月
面積:106m2
仕上げ材料
床:モルタル研ぎ出し仕上げ
壁:メープル突板 藍染染色の上ウレタン塗装仕上げ
天井:PB下地AEP塗装
什器:天板/メープル集成材藍染色仕上げ 脚・ステンレスバイブレーション仕上げ
ベンチ:座面/メープル集成材藍染色仕上げ 脚/ステンレスバイブレーション仕上げ