KŌJIN KYOTO by cafe co.

Gallery | Kyoto, Japan

KŌJIN KYOTO | cafe co. | photography : Yasunori Shimomura

 

DESIGN NOTE

  • 鴨川沿いの一等地に計画されたRC造ギャラリー

  • 要素を減らし、精度高く設えたインテリア

  • 対岸からの見え方を意識した照明計画

EN

photography : Yasunori Shimomura

words : Chisa Sato

 
 

森井良幸率いるcafe co.が、京都の顔とも言える鴨川沿い、荒神口に佇む新築ギャラリー「kōjin KYOTO」の設計を手掛けた。具体的な用途が決まる前に、土地を所有するクライアントから依頼を受け、打ち合わせを重ねながらギャラリー機能を中心とした地下1階地上3階建ての計画が定まったという。1階はアートコレクターでもあるクライアントのコレクションを展示するギャラリー、2階はアートを見ながらミーティングなどもできる談話室、3階はテイスティングや食のイベントのためのキッチンダイニングという構成となった。

外観で目を引くのは、軽快に突き出し、軒裏までコンクリートで一体的に仕上げられた軒のデザインだ。「京都は景観ガイドラインにより、軒を出した勾配屋根にするというルールがあります。しかし、周囲のマンションと同じ形状にしたくないという思いもありました。そこで、軒天はコンクリート、軒先は溶融亜鉛処理した鉄板を用いることで、軽やかさと薄さを実現しています。また、鴨川側に柱や構造体をできるだけ出したくなかったので、東側は全面ガラス開口としました。ギャラリーで全面開口というのはめずらしいですが、日差しを深い軒で遮っています」と森井は語る。

デザインへこだわりは、インテリアの随所に見ることができる。鴨川に向けてL字型にテーブルを配した3階では、傾斜する屋根形状がそのまま天井に現れている。傾斜させた型枠にコンクリートを流し込む作業は、工務店にとっても前例がない高度な技術を要する工事となったという。打ち放しコンクリートの天井には、その表情を際立たせる極細のライン照明が配された。「現在は建築家が内装も手掛ける時代となりましたが、インテリアを主戦場としてきた僕たちならではの仕事を見せたいと思いました。この計画では、建築も内装も僕たちが一貫して手掛けているので、無駄なことをせず、建築の仕上げだけで終わらせるようなデザインをしています」。

 

夕方には、各階の窓際に設けたライン状のアッパーライトが、軽快にデザインされた庇を照らす

 

周囲からよく見えるロケーションのため、照明計画も重要なポイントとなった。軒裏が均等に明るくなるよう、窓際の床面にアッパー照明を配置。かつて設計した集合住宅で試みた手法と森井は言うが、アッパーライトの光源を一つひとつ見せるのではなく、面を均一に照らすことで、建築のシャープなラインを強調する光を実現している。また、室内の壁際にはライン照明を、階段側面には間接照明を設置。その結果、夜には建築の骨格が光によって浮かび上がり、室内が影絵のように映し出される。「照明はインテリアデザイナーが得意なテクニック。どんな風に使われても建物がきれいに見えるようにという気配りです」。

細心の注意を払い、各部屋のスケールに合わせて設置された照明に加え、空調は床吹き出しシステムを採用することで、ダクトの無いすっきりとした室内環境となった。また、「身体が触れるところだけは温かい素材を」という意図から、木工作家に依頼した吉野杉の階段手すりなどが、コンクリートの空間にやわらかさを与えている。

全体のデザインの根底にあるのは、「京都らしい景観に馴染みながらも存在感を出すこと」。「僕は京都人なので、鴨川沿いの角地という、誰もが目にする街並みに寄与するロケーションには緊張感を持っていました。それに加えて、“名刺代わりの建物にしてほしい”というオーナーの言葉にも、気が引き締まりました」。京都らしさについては、「この地域では条例で勾配屋根を求められるのですが、軒を出しても、洋服を着ながらチョンマゲ姿という文明開化の頃の日本人のような感覚の建物もある。そうした和洋折衷ではなく、現代の感覚で着物を粋に着こなす“モダンな着姿”の建築を目指しました」と振り返る。全体から細部に至るまで、随所に京都出身のインテリアデザイナーとしての矜持が現れた建築プロジェクトだ。

(文中敬称略)

 

DETAIL

床に吹き出し口を設けることで、すっきりとした天井を実現した1階ギャラリー。天井中央には打ち放しのスラブが見え、壁に沿う白い天井には、ロの字型に回した配線ダクトの外側に、色温度を変えられるライン状のLED照明をシームレスに設けた

鴨川に面するフィックス窓の内側には、床と同面に幅15mmのアッパーライトを埋め込み、夜には下面からのフラットな光が庇を照らし上げる

3階の天井には、屋根勾配がそのまま現れ、その勾配に沿うようなオリジナルのライン照明を配した。真鍮製のカバーリングを備えた特注照明は八木製作所によるもの。

3階ダイニングの可動式のオリジナル照明

オーナーのコレクションルーム前の通路には、京都でよく知られる「金網つじ」の金網をデュフューザーとした光の演出がある

階段の手すりは、吉野杉を用い、木工 森が制作したオリジナル

 

CREDIT

名称:kōjin KYOTO

設計:cafe co. 森井良幸 小倉基弘 柳楽博行

照明計画:LIME DESIGN 村井孝吉

造作家具(3F):TIME & STYLE 熊井和彦

特注金物:八木製作所 北尾博史

木工造作(手すり):木工森 森幸太郎

施工:野口建設

所在地:京都府

竣工:2021年4月

敷地面積:97.62m2

建築面積:79.88m2

床面積:B1F 58.83m2、 1F78.81m2、2F54.84m2、3F54.84

仕上げ材料

床:1F/火山岩バサルティーナ水磨き 2F/オーク材フローリング 3F/オーク材フローリング白染色拭き取り

壁:化粧型枠コンクリート打ち放し 3Fキッチン/ナラ突き板、人工大理石

天井:コンクリート打ち放し

照明器具:3F天井/カバー・真鍮 +支持部分・スチール素地製オリジナル照明(八木製作所) 3Fキッチン/ステンレス ヘアライン製オリジナル(八木製作所) 開口部下/15mm幅LEDライン照明埋め込み

階段手すり:吉野杉(木工 森)

 

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