TOKIGURA by ABOUT

Archive & Gallery | Nara, Japan

TOKIGURA | ABOUT| photography : Takumi Ota

TOKIGURA | ABOUT| photography : Takumi Ota

 

DESIGN NOTE

  • 企業アーカイブを桐箱に保管するコンセプト

  • 既存の蔵を活用したデザイン

EN

photography : Takumi Ota

words : Reiji Yamakura/IDREIT

 
 

東京と大阪を拠点とする、デザイン事務所 ABOUTの佛願忠洋がデザインを手掛けた、中川政七商店のアーカイブを保存するための空間「時蔵」。同社の創業300周年を機に、過去の歴史を保存する必要性から計画されたもので、命名は現会長の13代中川淳による。

インテリアデザインを手掛けた佛願は、「創業300周年を迎えるタイミングで、中川さんの生家にある蔵に入る機会があり、中川政七商店としての歴史をきちんと残す必要があるだろうと中川さんと話をする中で、これまでの300年間と今後の100年をアーカイブとして残すデザインを提案しました。デザインの中心となっているのは、その年の成果を一つの桐箱に入れて保管するというアイデアです」と計画当初を振り返る。

蔵の1階には、創業年の1716年から2016年までの箱、2階には2017年から2116年までの100年間の箱を一方の壁に整然と積層した空間がデザインされた。

「この空間では、すべての箱を見渡せなければ意味がないと考え、一部を吹き抜けとして、壁一面の桐箱が見えるようにデザインしました。箱のサイズは、柱間の寸法を元に決定したものです。毎年の成果を箱に入れて残すというのは、働いている方にとってはプレッシャーになるかもしれませんが、毎年継続して保管していく過程がブランドの価値になり、また、この箱があることで常に新しいことに挑戦しようという情熱につながると考えました」。床には、かつて材木店から譲り受けた9cm角の合板を小口が見えるように敷き詰めている。「この床は、長い歴史も小さなことの積み重ねでしかない、ということを表現したいと考えたものです。これからの歴史を担う社員の方にも、この蔵の役割と空間に対する思いを共感してもらいたいと考え、合板を貼り合わせる作業は皆さんに手伝ってもらいました」という。

ものを保管することを本来の目的としてきた蔵に、1年ごとの成果を桐箱に詰めるというプログラムと成果を明快に見せるデザインを掛け合わせることで、いわゆる企業アーカイブとは一線を画した、従業員をモチベートする施設となった。現在、この蔵はギャラリーとしても活用されている。

(文中敬称略)

 

DETAIL

1年ごとの成果を、この空間のために設えた特注サイズの桐箱に毎年納めていくというコンセプト。桐箱の長辺は930mm。

1年ごとの成果を、この空間のために設えた特注サイズの桐箱に毎年納めていくというコンセプト。桐箱の長辺は930mm。

桐箱のサイズは、既存の柱間寸法から割り出したという。

桐箱のサイズは、既存の柱間寸法から割り出したという。

床には9cm角の合板を小口が上から見えるように敷き詰めたもの。作業日を設定し、中川政七商店の従業員に合板を貼り合わせる作業などを手伝ってもらいながら仕上げたという。

床には9cm角の合板を小口が上から見えるように敷き詰めたもの。作業日を設定し、中川政七商店の従業員に合板を貼り合わせる作業などを手伝ってもらいながら仕上げたという。

既存の蔵戸や梁などは残したまま、内部に新たな機能が挿入された。

既存の蔵戸や梁などは残したまま、内部に新たな機能が挿入された。

 

CREDIT + INFO

名称:時蔵

設計:ABOUT 佛願忠洋

施工:田中工務店


所在地:奈良県奈良市元林院町31-1

用途:ギャラリー

竣工:2018年6月

面積:1F 48.0m2, 2F 32.4m2

仕上げ材料

1階 床:積層合板木端敷き込みオスモ仕上

2階 床:杉材フローリング墨染め仕上げ

壁:塗装仕上げ

棚什器:木下地シナ合板 t9 黒染め仕上げ + 正面面材・黒革鉄板 t1.6 

特注桐箱:W930 D600 H275

 

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