「Keep Our Creative」とは?
words: Reiji Yamakura/IDREIT
インテリアデザイナーや家具、マテリアルを扱うメーカー関係者の間で、フェイスブックのグループ内で開催される「Keep Our Creative」という勉強会が人気を集めている。これは4月上旬に、FLOOAT, Inc.のデザインディレクターを務める吉田裕美佳さんが個人で立ち上げたオンライン勉強会のプラットフォームで、フェイスブックのクローズドクループ内で、デザインにまつわるイベントが週に3,4回のペースで開催されている。発起人である吉田さんに、開設のきっかけなどを聞いた。
— 現在、600人を超える大きなグループとなりましたが、どのようなアイデアから「Keep Our Creative」はスタートしたのでしょうか。
私は、FLOOAT, INC.のデザインディレクターとして、オフィスやインテリアのデザインを手掛けているのですが、現在の情勢により、計画中のプロジェクトが延期や中止となり、また、在宅勤務のため通勤時間がなくなったことで空いた時間をインプットに当てられないかと考えました。
そこで、オンライン勉強会をしたいので「講師となってくれるメーカーの方や参加者いませんか」と気軽にフェイスブックに投稿してみたところ、予想以上の反応があり、私たちの会社のメンバーだけで聞くよりも、オープンな場にすれば遠隔地の方も参加できると考え、招待制ではありますがメンバーになった人は誰もが自由に参加できる現在の方法でスタートしました。
— なるほど。まったく個人的な動機からスタートしたのですね。
はい、Keep Our Creativeは、どこかから協賛があってビジネス化しているわけではなく、完全に私が個人として運営しているものなんです。これまでデザイナーという立場で仕事をしてきましたが、メーカーの製品情報やブランドの背景を聞く時間はなかなか取れませんでした。
そこで、まずは個人的につながりのあったメーカーの方たちに声を掛け、HAY、マルニ木工、Vitraなど数社の方が講師として手を上げてくださって小規模なオンライン勉強会を4月中旬に始めました。その後、知り合いが知り合いをつなげるかたちで参加希望者や、お話してくださる方が集まってきて現在に至っています。
— スピーカーや参加者からの反応はいかがですか。
スピーカーの方にとっては、これまで接点のなかった方と交流できたという声が上がっています。また、オフラインではなかなか他社のイベントに同業の方が参加するのは難しいと思いますが、ここでは、他のメーカーの方が参加し、そこでメーカー同士の繋がりが生まれています。講師となるメーカーにとっては、参加者全員の連絡先が分かったほうが良いとは思うのですが、気軽に参加できるスタイルにしたいので、事前申し込み制にはせず、自由に参加できる方式にしています。
— 先日の、東京とミラノのジャーナリストが集まった「ミラノデザインウィークの10年を振り返る(スピーカー:土田貴宏さん、山田泰巨さん、田代かおるさん、モデレーター:山本考志さん)」や、デンマークのNorm Architectsと芦沢啓治さんが登場したトークイベントは大盛況でしたね。
そうですね。メーカーの方による勉強会だけではなく、他にも興味をもってもらえる内容があるのではと、夜の部として座談会やトークイベントを様々な方のご協力のもとに行なっています。イベントによっては、200人以上の参加者がいた回もありました。
— 今後の展開についてイメージがあれば教えてください。
将来、外出自粛などが解消した場合には頻度が少なくなるかもしれませんが、せっかく多くの方が集まってくださっているので、現在のフラットな仕組みのまま継続していきたいと考えています。また、昼間の勉強会には参加できない方もいらっしゃるので、業務時間後に行うイベントを充実させていけたらと考えています。また、観客として参加してくださっている方たちから、何か発信してもらうようなコンテンツが生まれたら幅が広がるのでは、と楽しみにしているところです。
メーカーを招いた勉強会については、メーカーやディーラー主催でないがゆえに、売りたい人と買いたい人を結びつけるマッチングではなく、「売りたい人」と「(情報を)知りたい人」、もしくは「ブランドの魅力を伝えたい人」と「ブランドのことを知りたい人」をつなぐ場として機能していることが新鮮であり、このフラットな環境は現在の情勢と、自由参加のオンライン形式が可能にしたものだろう。今後も、寺田尚樹さんを講師とした連続レクチャー「テラダセンセイの今さら聞けないモダンファニチャー史(生徒:芦沢啓治さん、ファシリテーター:藤本美紗子さん)」など、興味深いコンテンツが続くので目が離せない。