Interview with HIROYUKI NAGATOMI / NEW LIGHT POTTERY —part 1
永冨裕幸と奈良千寿の二人が照明メーカー勤務を経て、2015年に奈良県を拠点として設立した照明デザインスタジオ「NEW LIGHT POTTERY」。彼らは照明デザイナーとして、商業空間などの照明計画を手掛けながら、並行して独自開発した照明器具を販売している。IDREITが注目するオリジナルプロダクトのいくつかについて、その開発コンセプトや細部へのこだわりを代表の永冨さんに聞いた。
— お聞きしたい新作もたくさんあるのですが、まずは、NEW LIGHT POTTERYを代表するプロダクト、独立後最初に発表した真鍮製の照明器具「Bullet」のことを聞かせてください。
Bulletは会社員時代に、空間を邪魔しないシンプルなペンダント照明が求められた仕事で、特注品として製作していたものが原型となっています。
当初は、真鍮パイプを切った部材を溶接してつくっていましたが、どうしてもパイプ小口の薄さや、軽量なのでコードがまっすぐ伸びないことなどが気になっていました。そこで、次の段階として、金属を削り出して製作すると、それなりに費用は掛かりますが満足のいくものができました。その後も、削り出しで様々なバリエーションをつくっていたのですが、独立したことをきっかけに量産したいと考え、鋳物で知られる富山県高岡市のメーカー、能作を訪ねました。
— なるほど。現在は派生モデルが多数ありますが、最初に量産化したのはどれですか。
E26とE17の口金に合うBulletとBullet smallの二種類です。ともに鋳物の削り出しで製作しています。このプロダクトについては、ありがたいことに過去いろいろな店舗などに採用していただいたモデルなので、そこでの試行錯誤を経てつくりたい形状が細部まで決まっており、金型製作は思い切った投資になりましたが、迷いなく進めることができました。
— 真鍮の表面には何か加工をしているんですか。
自分の中では経年変化はして欲しいものなので、磨いた後はすべて素地のままとしています。
ずっと綺麗なままであるものより、使うほどに味わいがでるものに興味があるし、これは夢のようなものですが、自分たちが手掛けたプロダクトがヴィンテージになってほしいと思っているんです。何十年も後に、ロゴを見たら年代がわかる、というように。
— そうなったら素敵ですね。経年変化してほしいプロダクトというのは、大手メーカーの照明器具との大きな違いだと感じます。シェード付きなどのバリエーションはどういった経緯で増えていったのですか。
Bulletができた後に、上方向への光をカットしたものをつくりたくなって、円盤状の平たいシェードを後加工で取り付けたフラットシェード、机上面だけ照らすラウンドシェートや、もう少し広がりのあるワイドシェードなどが自然発生的に増えていきました。
その後も、ガラスと組み合わせたり、スタンドを取り付けたりとBulletのパーツは活用しています。
また、空間のトーンによっては真鍮が合わないこともあるので、黒いタイプもつくりました。着色には、漆を塗ったあとにお歯黒のようなドロッとした塗料を焼き付ける高岡の伝統的な技術を使っています。一般的な塗装とは違い、金属らしい質感があり、少しムラがあるのが特徴です。また、今はシルバータイプを試作中です。
— この黒いタイプは永冨さんの表現したいものがよく現れた表面仕上げですね。続いて、Bulletに似たシンプルな形状ですが、いくつかの素材を組み合わせたDigdugはどのようにしてデザインしたのでしょうか。
Digdugは、Bulletとはまったく違う発想からつくったものです。もともと、上下で二つに分割できる、白い釉薬がかかった磁器製の量産品のソケットがありました。ソケットの形はとても気に入っていたのですが、白くツヤのある質感が苦手で、工場を訪ねて、釉薬無しでつくれないか相談したことが始まりでした。
その時は、ちょっと汚れが目立ちますよ、なんて言われながらもツヤ消しタイプをつくってもらうことができました。そのうちに、顔料を練りこんで焼いたらどうなるだろう、という興味から依頼した結果、現在Digdugに使っている濃い茶色のソケットができました。
その白と茶色の磁器ソケットを組み合わせ、上に木と、槌目のある真鍮パーツを取り付けて地層のようなこの形状になりました。木工部分は、様々な樹種を扱っている作家に依頼しているので、時に希少なアフリカ材などを使うこともあります。
— ペンダントとクリップタイプがあるのですね。
はい。もともと量産品のソケットなので、ちょうどいい既製品のクリップがありました。ただ、クリップ表面の金色掛かったメッキは合わないと思い、シルバーのメッキを別注しています。意匠をどうしたいというアプローチではなく、この気に入ったソケットがあり、もっと簡易な裸電球の器具があったらいいのに、という単純なアイデアがスタートになったものです。
— そうだったのですね。既製の部材を使いながらも、細部を一つひとつカスタムしていくことで、NEW LIGHT POTTERYらしい製品となるのですね。色や仕上げを微調整できたのは、やはり、長年生産現場に通ってきたからでしょうか。
確かにそれはあるかもしれませんね。以前、メーカー勤務だったので、そうした生産地や工場のかたとつながりがあったことは、今となってはとても良かったと感じます。Digdugなどは、独自にデザインしたわけではなく、世の中にあるものを組み合わせたレディメイドです。