FILAMENT by NEW LIGHT POTTERY
Light bulb
FILAMENT | NEW LIGHT POTTERY | photography : Hiroki Kawata
DESIGN NOTE
眩しさを抑えた白熱電球
ユニークな円形フィラメント
グレーのグラデーション加工
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photography : Hiroki Kawata
words : Reiji Yamakura/IDREIT
奈良を拠点とする照明ブランド、NEW LIGHT POTTERYからオリジナルの白熱電球「FILAMENT」が発表された。
LED全盛の時代に、なぜ白熱球を自社ラインアップに加えたのかを代表の永冨裕幸に尋ねると「もともと僕たちの照明器具には、裸電球を使うものが多くあり、いつか電球をつくってみたいと考えていました。また、自社製品を見てもらうギャラリーを設けたことで、照明のプロではない一般のお客さんと話をする機会が増え、多くの方は調光機を使っていないという事実を知りました。そこで、直接見ても眩しくない電球がつくれないかと考えたのです。また、白熱電球がLEDに置き換わり、国内工場がどんどん減っていく現状と、技術が失われてしまったら二度とつくれなくなるという危機感も背景にありました」とのこと。
調光を絞った状態のような、温かみのあるアンバーな色みの電球というコンセプトをもとに、幾度か断られながら、国内で製造できる工場に出会えたという。また、フィラメントの設計には、かつて好んで使っていたアメリカ向けの電球から得たアイデアが生かされている。「アメリカ規格である130V用の電球を、日本の100V電源で使うと、程よく調光を絞った状態となり、かつ、規定電圧よりも低電圧で光らせるために、超寿命になるという効果がありました。その経験から、高電圧用のフィラメントを使い、130V用とすることでまぶしさを抑えた電球ができると考えたのです」。
これらの基本的な考え方に加え、この電球には二つのポイントがある。一つ目は表面のグラデーション。「ガラスシェードの器具を開発した際に、グレーのシェードはかなり眩しさを低減できるとわかっていたので、電球自体にサングラスのように色を付けようと考えました。電球工場ではそうした加工はできず、他県の工場を探し出し、光源を見たときに眩しくなく、かつ、上方向には自然な光が出るように、金属を蒸着し、先端が最も濃くなるグラデーション仕上げとしました」。
E17タイプ。フィラメントを円弧のような9角形に設計したのは、発光部分をできるだけ長くして、直接見たときの眩しさを低減するためという。
もう一つ彼らがこだわったポイントが、フィラメントの形状だ。「フィラメントは、短ければ短いほど効率良く明るくできるので、一般的な白熱電球には短い棒状のフィラメントが使われます。それに対し、この電球では、振動に強い耐震電球の技術を使い、アンカーが7本ある9角形のフィラメントを採用しました。これは、既存の耐震電球よりもアンカー数を増やし、さらにフィラメントの距離を長く取ることで、できるだけ眩しさを抑えようという意図で設計したものです」。電球内に収まるサイズで、できるだけフィラメントを長くという難易度の高い要求は、熟練した職人技があってようやく実現できたと永冨は振り返る。
使って欲しい用途を尋ねると、スタンドやペンダントなど目に近いところで使ってもらいたい、とのこと。また、発売後の反響から、他社製の照明器具に使われていることが素直にうれしいと語る。奇をてらうのではなく、あくまでスタンダードなものを提供したかったという考え方にも、NEW LIGHT POTTERYの姿勢がよく表れている。彼らは懐古主義から白熱球に取り組んだわけではなく、同様のコンセプトをもとに、LEDのオリジナル電球の開発も同時に進めていたが、光の見え方からLEDタイプは製品化を見送ったという。
(文中敬称略)
DETAIL
E26タイプ。FILAMENTの口金サイズはE26とE17の2種類、ワット数は各サイズに40Wと20Wがある。
電球のガラス表面には、先端が濃くなるようにグレーのグラデーション加工が施された。トップにはNEW LIGHT POTTERYのロゴ。
E17タイプを、NEW LIGHT POTTERYのペンダントライト Bullet smallに取り付けた様子。
NEW LIGHT POTTERYの永冨さんにものづくりのプロセスを聞いたインタビューはこちら
素材:ガラス(グレーカラーグラデーション)
サイズ:
FILAMENT E26 / φ55 x H107
FILAMENT E17 / φ50 x H72
消費電力:40W, 20W