Interview with HIROYUKI NAGATOMI / NEW LIGHT POTTERY—part 2
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photography : Hiroki Kawata
words : Reiji Yamakura/IDREIT
この記事はインタビュー後半です。前半の記事はこちら「Interview with HIROYUKI NAGATOMI / NEW LIGHT POTTERY —part1」
— 既製のものを組み合わせるというのは、とても興味深いアプローチですね。もう一つ、初期のプロダクトで、僕が実物を始めて見たのは、大阪でninkipen!の今津康夫さんが設計したファッションのお店だったと思うのですが、テラリウムのようなガラスケースを用いた「R2」のことを教えてください。
他のプロダクトは、照明としてのあり方を考えてつくっているので、形にそこまで固執せずデザインらしいデザインは無いと思っていますが、R2は自宅に、電球が主役になるような照明器具を置きたいと思って2011年ごろからスケッチを描いていた、極めて個人的なプロダクトです。
当初は、熱抜きの穴がない頂部まで一体のガラスでつくっていたのですが、試作が結露したことなどもあり、最終的には熱抜きの穴を設けて現状のデザインとなりました。ガラスと木の相性が良いことと、上部に光を受ける場所をつくりたくて、ボール状の木を上に載せています。
R2は、高さ約40センチのものと、約30センチのスモールタイプの2サイズがある。それぞれ、グレーやブラウンなどの吹きガラスシェードの色と、ウォルナットかオークの木部を選ぶことができる。
— 吹きガラスのケースはどこでつくっているのですか?
大阪にある工場に依頼しています。当初は、型無しで吹いてもらっていましたが、寸法精度を上げるために、現在は木型を使ったマウスブローでつくっています。このプロダクトは僕が溺愛しているもので、照明器具というよりは人に寄り添う仲間というイメージで、スターウォーズのR2-D2からとってR2と名付けました。
— それは知りませんでした! 今では、大きな金属製のものから陶器製のものまで幅広いラインアップがありますが、最近のプロダクトについても教えてください。
100年ほど前のドイツのAEG製のワークショップランプを原型に、茶の湯など日本の文化である“写し”の考え方をもとに信楽焼でシェードをつくったのが「soil」です。
ずっと“写し”の手法で何かをつくれないかと構想していたものです。表面は釉薬無しで、マットな質感としながら、拭き掃除のメンテナンスができる程度に平滑に仕上げています。色はベンガラ漆を練りこんだ限定色モデルや、生成り色のnude、blackなどがあります。soilでは、コンセプトを含め、色や形状など、海外からの目線をすこし意識しました。
また、直径が1mある「void」と名付けたアルミ製シェードの大きな器具は、東京・大田区のへら絞りの技術でつくっています。生産時の傷が多少表面につきますが、そのまま表面仕上げをせずにアルミ素地のままとしています。一方、アルミ鋳物でつくった「Robin」は、上部のスリットから上にも光が漏れる器具です。照明器具というと同心円状のものが多いですが、角の丸い三角形の独特の形状とし、使い込んだような味わいを出すために粗めにバレル研磨をしています。
— わざとピカピカにならないようにしているんですか?
そうです。そのさじ加減がなかなか難しいのですが、ドラム内で回転させるバレル研磨の時間を調整して、程よい具合にしています。
— 永冨さんは、器具の形にはさほどこだわらないというお話でしたが、質感や表面の仕上がりには並々ならぬこだわりがありますよね。
確かに、そこだけはこだわっています。素材そのものの良さをいつも大切にしたいと思っているんです。料理に例えると、味付けは塩だけであっさりと、という感じですね。(笑)
僕はデザイナーではないので、煮たり揚げたりという複雑なことはできない。そこは自分の弱点でもあり、また、個性でもあると思っています。
— なるほど、それぞれ開発の経緯などもお聞きできたので、ニュアンスはよくわかる気がします。そして、最近は器具だけでなく、なんとオリジナル電球の開発もしているそうですね。
はい、白熱電球とLED電球を開発中です。これまで照明計画の仕事では、嫌というほど調光器を使って眩しさを抑えてきたのですが、調光しなくても目に優しい電球がつくれないかと考え、白熱電球のほうは耐震電球という技術を使って、日本国内の工場で試作を重ねています。開発はほぼ最終段階なのですが、電圧を130Vとして、日本の100Vの電源で使った時に直接見てもまぶしくないようなものを考えています。
LED電球については、LED特有の目にキツい光をなんとかできないかと思い、直接見ても不快でないようなものを別の海外工場と進めているところです。
— それは楽しみです。最後に、永冨さんが手掛ける照明プロダクトで、日本的なデザインという面で意識することはありますか?
日常の暮らしの中で、外に食事に行くこと一つとっても、日本らしい文化やデザインに触れていると思いますし、「Soil」で試みた“写し”のように、日本に古くからある考え方を参考にすることはあります。
しかし、自分でつくるプロダクトについては、あえて日本であることを打ち出して“和”のデザインにするのは避けたいと思っています。
実は今、縁があって、歴史あるメーカーと、和紙を使った照明器具にチャレンジしているところなのですが、普通に使うと和風なものになってしまうので、どうやったら和紙の魅力を生かせるか、毎日サンプルをいじりながら検討しているところです。
「最近気になるのはスイッチやコードなど、重箱の隅をつつくような細かいところになってきて」と永冨は笑うが、NEW LIGHT POTTERYのオリジナルプロダクトでは、ペンダント照明を天井に取り付けるフランジ部分や、コードの端部に見えるパーツ一つひとつにまで彼らの配慮が行き届いている点は見逃せない。
本人は、自分はデザイナーではないと言うものの、そうした目配りと審美眼が、空間デザインのわずかな操作で違いを生み出そうとするインテリアデザイナーや建築家たちを引きつけるのだろう。白熱電球が消滅しようかという現代に、フィラメントの見え方に注力して開発中というオリジナル白熱電球の仕上がりが楽しみだ。