FUJIMARU Higashi Shinsaibashi by naoya matsumoto design
Wine Bar & Restaurant | Osaka, Japan
DESIGN NOTE
既存建物の価値を生かすデザイン
素材感と職人技術を見せる、現場加工のディテール
photography : Takeshi Asano
words : Reiji Yamakura/IDREIT
大阪の東心斎橋に計画されたワインバー兼レストランのデザイン。
自社農園でブドウを栽培し、大阪市内でワイン醸造するオーナーは、かつてフランスとオーストラリアでワインづくりを学んだ経験があり、当時通った、古い建物を生かした飲食店の記憶があったという。そこで、築50年以上の既存建物を生かし、スチールや無垢材といった当たり前の素材を活用することで「現存するものに敬意を払いながら、素材感を生かし、気軽にワインを楽しめる空間」を目指してデザインが進められた。
外装は、塗り重ねられていた塗料をすべて剥がし、建築当時のタイル仕上げを見せた。店内は一度スケルトンにした上で、1階には1000種類のワインを置くことのできる機能的なウォールシェルフを備え付けた。また、1階中央には、同店のポイントとなる、65mm厚のレッドシダー無垢材を長い寸切ボルトで締めた天板のハイカウンターを据え、全体の印象が粗野にならないよう、上質な吹きガラス製ペンダント照明でバランスを取ったという。
既存壁面に合わせたコンクリートブロックの脚と天板は、階段の1段目と角度と合わせ、階段状に斜めにデザイン。カウンターの一端を斜めにした意図は、2階のレストランへの自然な“いざない”と動線の確保を考慮したとのこと。フレンチベースの創作料理を提供する2階には、1階同様のカウンターとテーブル席を用意。カウンター席背面には、スチールLアングル材を現場で加工し、手すりと一体的なコートハンガーを設けている。
この空間における設計の考え方をよく表しているのが、「鉄は、鉄として使う」という松本の言葉だった。
鉄であれば錆びることもあるし、溶接すれば跡が残る。カウンター天板の無垢材は、反ることもあれば、オイル仕上げのみの表面にはシミも付く。それらの長所短所を理解した上で、素材本来の質感を望んだ施主に対し、詳細寸法が解体まで得られなかったという事情も踏まえ、松本は現場加工できる材を多用した。その結果、新規で付け加えた部分にも手仕事の風合いが濃厚に現れ、経年変化した既存部と調和する空気が生まれた。
(文中敬称略)
DETAIL
CREDIT
名称: FUJIMARU Higashi Shinsaibashi
設計: 松本直也デザイン 松本直也
施工:創心社
照明計画:New Light Pottery
厨房計画:ぞう屋
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所在地:大阪府大阪市中央区東心斎橋1-4-18
竣工:2019年6月
面積: 82m2
用途: ワインバー & レストラン
仕上げ材料:
カウンター/レッドシダー材t65 寸切ボルト締め、CBt100積み 1階ワインボトル棚/レッドシダー材t40 1階ペンダント照明/ラジオハウスペンダント(ルイスポールセン) エントランス扉/レッドシダー材+スチールフラットバーt3 手掛け/スチールフラットバーt6埋め込み