Okayama HAMURA by Fumihiko Sano Studio

Restaurant | Okayama, Japan

Okayama HAMURA | Fumihiko Sano Studio | photography : Daisuke Shima

 

DESIGN NOTE

  • 要素を削ぎ落としたカウンター席

  • 2枚の無垢板を斜めに継いだ厚さ80㎜、長さ10Mの吉野杉カウンター

  • 一つの杉材から切り出した共木で構成した目透かし天井

EN

photography : Daisuke Shima
words : Yuki Tamaki

 
 

完全紹介制の高級和食店「岡山はむら」。もとは別の場所でより大きな規模で営んでいたが、オーナーの交代を機に移転し、カウンター10席のみの店となった。新たな店舗の内装設計を手掛けたのは、Fumihiko Sano Studioの佐野文彦さんである。

訪れた人が料理人や客同士の交流を楽しみながら、料理を堪能できる。そんな特別感のある場を設計するにあたり、佐野さんは「要素を絞る」ことを考え、カウンター席を見せ場として設えた。

看板のない隠し扉のようなエントランスを入ると、大きな床の間が現れる。鞍馬石の沓脱石を越え、比叡山延暦寺に生えていたという杉材を使った重厚な扉を開けると待合室へ。さらに奥の扉を開けると、料理人が迎えるカウンター席に至る構成だ。

カウンター周りは、柱や設備が現れることのないよう計画されている。奥の壁には、隠し釘で留められた花器が一つだけ飾られる。料理人が客に背を向けず作業できるよう機能を配置し、このミニマルな空間を実現した。

長さ約10mのカウンター天板は、吉野杉。木の中心に近く強度のある赤身で、節のない無地材を採用している。

佐野さんはカウンターについて、こう語る。「吉野杉は杉の中では硬く、淡くピンクがかった色味が特徴です。今回は、一本の木から取った二枚の板材を同方向に継いで、木目が柔らかく美しい木表が両方とも表面となるようにしました。根元から先まで色味や目の違いがほぼない良質な材だからこそ、可能な方法です。設計においては、その都度木材の特性を見極め、どう継ぐのが最適かを判断します」

継ぎ目は長手方向に対して垂直ではなく、斜めにした。客がその前に座っても、意識が継ぎ目に向かわずに済むようにという配慮だ。カウンター奥には、同じ高さで奥行き500㎜のまな板が連なり、その下にシンクやコールドテーブルを配置している。

カウンター上部には、杉材の目透かし天井。一つの杉から切り出した「共木」を用い、木目や色味のそろった面をつくっている。奥の天井には勾配をつけ、フラットな天井との段差を利用してライン照明を仕込み、カウンター面から奥を斜めに落ちる光で照らしている。

佐野さんは照明の考え方について、「客席の背面には照明を当てる必要はないと考え、カウンター面と料理人の手元を照らすよう、照明を配置しました。これにより、客の影がカウンター面に落ちることなく、料理や所作が美しく見えます」と話す。

日本では内装規制により、店舗空間に自然素材を取り入れることが難しい場合もある。しかし、Fumihiko Sano Studioでは、どのプロジェクトにおいても工夫をしながら、自然素材を取り入れることを大切にしている。

「岡山はむら」でも、本物の力を感じさせる自然素材を巧みに取り入れ、緻密なプランニングとディテールによって、要素を絞った濃密な空間を生み出している。

 

DETAIL

目地部分に幅6㎜の隙間を設けて杉板を貼った天井。一つの木から製材した板材を用いることで、色味や目がそろった面としている。段差部分は、ひとつながりの材をカットして用いることで、木目を連続させている

吉野杉のカウンターは長さ約10m、奥行き650㎜、高さ730㎜。その奥に檜材のまな板が奥行き500㎜で連続する。珪藻土塗りの壁や杉板の目透かし天井は、ノイズとなる要素が視界に入らないようディテールを工夫している

 

CREDIT

名称:岡山はむら

設計:Fumihiko Sano Studio 佐野文彦

施工:松井建設

所在地:非公開

経営:株式会社ホーミィダイニング

用途:飲食店

開業(移転オープン):2023年3月

仕上げ材料

壁:珪藻土

天井:杉板目透かし貼り

カウンター:吉野杉材 t80

 

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