OFFSET PLANE by WORKSHOP™

Installation | Beijing, China

OFFSET PLANE | WORKSHOP™ | photography : Go Itami

 

DESIGN NOTE

  • アルミフレーム、蛍光管、足場材という規格品のみの構成

  • 既存の足場材を用いた、人が回遊できる展示空間

 

photography : Go Itami
words : Yuki Tamaki

EN

 
 

7つの出版社によるアートブックを紹介する展示「Offset Plane」が、2025年4月から6月にかけて、中国・北京市内のマルチスペース「Ramp」にて開催された。インスタレーションと空間構成を手がけたのは、WORKSHOP™(ワークショップトレードマーク)として活動するアーティストの有川裕之さんだ。

2013年に自身のファッションブランドを立ち上げた有川さんは、展示会のために什器のデザインを自ら手がけるようになった。2017年にはブランドを休止し、今回の出展者の一つである出版社・Rondadeが企画する展示の什器を手がけるなど、協働を開始。2019年からはWORKSHOP™名義でアートワークの制作や展示をはじめ、現在、東京を中心に活動している。

2024年の「Beijing International Book Fair」では、中国の出版社ori studioが主催し、Rondade、edition.nord(日本)、Fair Enough(スイスの4つの出版社によるグループ)による書籍の展示企画において、有川さんがディスプレイを制作。3本のラインが交錯するアルミフレームの上に本を置き、異なる出版社の関係性を表現した。「Highway Intersection」と名づけられたその展示を見たRampのオーナーから声をかけられたことが、今回の「Offset Plane」の企画へつながったという。

会場となったRampは、北京市郊外にある元工場を改修したマルチスペースである。天井の高さは9m、面積は367㎡と広々した空間で、コンクリートのスロープや階段、足場材を組み上げてつくられた構造体などがすでに設られていた。

「“遷移平面”を意味する『offset plane』という、主催者らによる展示のコンセプトとこの空間から、既存の足場材を再構築し、新たな展示空間をつくれないかと考えました」と有川さんは振り返る。

 

既存空間に元々あった足場材によるフレームを解体できる部分は解体して展示空間を構成。足場材の一部は残し、2階への動線をそのまま活かしている。

 

会場内の足場材のうち、解体可能なものを取り外し、一部新たな材も加えて、会場中央に2層のグリッド構造を組み上げた。そこへ高さや角度の異なるアルミフレームを挿入。アルミフレームの上にアクリル板を配置し、57冊の本を点在させた。鑑賞者は構造体の中を動いて、立ち止まったりかがんだりしながら、本を手に取りページをめくる。

「アルミフレームのバーを通すことで余白のあり方が変わる。視点が変化しながら本と相対する状況をつくることで、人がグラデーションを感じながらそこに没入できる体験が生まれます」 

 

会期中の様子(写真提供: ori studio)

来場者は足場材の上でブックを鑑賞する(写真提供: ori studio)

 

本展は、アートブックの展示であると同時に、写真家・伊丹豪さん、サウンドアーティスト・箱崎健志さん、有川さんという3人の作品展という側面ももち、有川さん自身のアートも展示された。蛍光灯を用いたインスタレーションは、見る角度によって表情が変わるよう立体的に配置。有川さんの作品には、蛍光灯が多用される。都心で育った生まれ育った彼にとって、オフィス街や歓楽街のネオンが原風景の一つだという。

「蛍光灯もアルミフレームも、自分が使うマテリアルはレディメイドの規格品です。それらを組み合わせて構築することで空間に “現象”を立ち上げることを試みています」

スケールの大きな空間に、本と人の関係を軸にしながら、写真、音、環境など、複数のレイヤーが重なり合う展示となった。会期終了後、本来は元に戻す予定だった足場材はそのままに、次なる展示の背景として活用されているという。

 

DETAIL

足場材を組み上げたグリッド構造に、アルミフレームを取り付けて諸所にアクリル板を設置し、本を展示した。アルミフレームの角度や高さ、本の置き方は現場で組み立てながら、決めていった。7つの出版社によるアートブック57冊が、展示された。

天井の高さ9mの大空間を活かし、2層にわたって展示。蛍光灯が並ぶアートは有川さんの作品。奥の壁面には、写真家の伊丹豪さんが設営最中にこの空間を撮影した写真が飾られた。

 

CREDIT

名称:Offset Plane

インスタレーションデザイン:有川裕之( WORKSHOP™

イメージインスタレーション:伊丹豪 

オンサイト・アレンジメント:秋山ブク

サウンドインスタレーション:箱崎健志

会期:2025年4月27日〜6月1日

会場:北京市朝陽区朗園駅 D4-4

主催:Ramp

特別協力:北京日本文化センター

仕上げ材料

足場材(一部既存利用)

アルミフレーム 30㎜×60㎜×4000㎜

アクリル板 t3㎜

 

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