AYAMEROW by Teruhiro Yanagihara Studio
Eyeware shop | Tokyo, Japan
ayamerow | Teruhiro Yanagihara Studio | photography: Takumi Ota
DESIGN NOTE
錆石を用いた重厚なディスプレイ什器
建築の意匠にトーンを合わせたカラースキーム
テナント外の領域との関係から導かれた平面計画

































photography: Takumi Ota
words : Reiji Yamakura/IDREIT
柳原照弘さん率いる、Teruhiro Yanagihara Studio(以下TYS)手掛けた、南青山のフロム・ファーストビル(1975年竣工 建築設計:山下和正建築研究所)内にある、アイウェアショップ「ayamerow」(アヤメロウ)のデザイン。TYSが神戸で自ら空間をデザインし、運営もしている「Vague Kobe」を訪れた、日本発のアイウェアブランドayameの代表、今泉悠さんが、その世界観とマテリアルに強く共感したことから設計依頼を受け、このプロジェクトが始まったという。
「フロム・ファーストビルに出店したいと願っていた今泉さんにとって、今回の店舗づくりは特別な思い入れがあるものでした。そこで、まずはフロム・ファーストビルのリサーチから始め、“ビルの記憶を挿入していく”ことをコンセプトとして、建物の竣工当時からそこにあったような空間を提案しようと考えました」と柳原さんは設計開始時を振り返る。
テナント区画はみゆき通りに面した1階ではなく、天井の低い2階の一室。インテリアデザインに関しては、天井の低さを逆手に取り、低さ、暗さを生かす方法を探っていったという。この立地でしかなし得ない“場所性”を感じさせる、共用部と店内のあり方については、「今回の立地ではテナント内だけをつくり込んでも、周囲から分断された印象となり、狭さが強調されてしまうので、1階の階段を上がり始めるところからアヤメロウの空間体験が始まり、ビル自体が一つの空間に感じられるようなデザインを意図しました」と語る。共用通路の壁のラインに沿うように設けた店内の壁や、建築のレンガタイルと同系色で整えられたインテリアは、そうしたアプローチから導かれたものだ。
共用通路の壁とラインを揃えて計画されたエントランス内の設え。色も共用部の素材とトーンを合わせている
店内に用いられたTeruhiro Yanagihara Studioのオリジナルチェア「EDITION 01 SIDE CHAIR」
また、一定サイズの商品を数多く並べることが求められるアイウェア店の売り場は、内照ディスプレイなどのメガネに適した見せ方や棚什器のサイズ感により、よく似た設えになりやすいと柳原さんは言うが、ここではそうしたイメージと差別化し、テナント区画の空間的特性から、石の洞窟のような空間をつくり、石を削り出してつくられた段差にメガネを置く、というコンセプチュアルなデザインが生まれた。傷が付きやすいメガネを天板となる面を水磨きした錆石の上に直接並べるという思い切った展示方法については、「専門店なのでメガネを雑に扱うような人はそもそも入って来ないし、空間に緊張感があるのでお客さんは商品をそっと置いてくれるので問題ない」とオーナー側が理解を示し、構想通りに実現することができたという。
店内奥の、柳原さんが「ここだけは少し空気の“質量”を上げたいと考え、洞窟の出口に近づいた感覚となるように天井を上げました」と語る、顧客が一定の時間を過ごす接客スペースには、壁一面の引き出しが設けられている。この一見シンプルな引き出し什器は、スタッフが商品を取り出す所作を美しく見せることにこだわり、側面からは引き出し機構が見えない底引きレールを採用。さらに、引き出しの内張りには自らデザインを手掛けたクヴァドラ製の布地「Haku」を用いることで、メガネを選んでから購入に至るまでの体験の質を一定に保つデザインがなされている。
DETAIL
塊として存在感を見せる、赤褐色の錆石
什器上部の段差に直接、メガネが並べられている
木製の引き出し什器。内張りは柳原さんがかつてKvadratの製品としてデザインを手掛けたテキスタイル「Haku」。引き出し側面にはレール機構が見えないデザインとしている
CREDIT
名称:ayamerow
設計:Teruhiro Yanagihara Studio 柳原照弘 Hansheng Hsu
照明計画:モデュレックス
アームチェア:さしものかぐたかはし
施工:キクスイ
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所在地:東京都港区南青山5-3-10 FROM-1st 2F
経営:株式会社 アヤメ
開業:2024年5月
面積:110m2
用途:物販店
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仕上げ材料
床:モルタル(フロアハード)の上硬質床用ワックス(フロアブライトシーラーM)仕上げ 一部山形緞通カーペット特注色
壁:ポリープル+カラー調色仕上げ(原田左官)
天井:モルタル薄塗りの上硬質床用ワックス(フロアブライトシーラーM)仕上げ
メガネ用ディスプレイ什器:赤錆石(トップ面水磨き仕上げ、側面一部JB仕上げ、本磨き仕上げ)
壁面引き出し什器:アサメラ突板 内張り/Haku(Kvadrat)
テキスタイル(引き出しトレー、椅子クッション):Haku(Kvadrat)
カーテン:Saros(Kvadrat)
家具:EDITION 01 ARM CHAIR(デザイン/Teruhiro Yanagihara Studio 製作/さしものかぐたかはし )
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