Shiroiya Hotel MATCHA-TEI by New Material Research Laboratory
Gunma, Japan
DESIGN NOTE
積層ガラスのファサード
抹茶色の土壁
杢目を水の流れに見立てた杉材カウンター
photography : Hiroshi Sugimoto/Courtesy of New Material Research Laboratory
words : Reiji Yamakura/IDREIT
現代美術作家の杉本博司と建築家の榊田倫之が率いる新素材研究所がデザインを手掛けた「真茶亭」は、群馬・前橋にオープンした「白井屋ホテル」内に設けられた、プライベートな会食などに使われる特別個室だ。「真茶亭」の名は、同ホテル内に移築された茶室の壁が緑色だったことにインスピレーションを得て、その色と共鳴する真の抹茶色を体現しようというコンセプトに由来する。
デザインのプロセスを榊田に尋ねると、「茶室から想起した抹茶色をテーマに、壁の左官仕上げは微調整を繰り返し、最適な色を探りました。また、その抹茶色と、建築外装の植栽とも呼応し、主張しながら時に同化する素材として、割肌の積層ガラスをファサードに用いました。19mm厚のフロートガラスは、表面に不均一さをつくるために小口を手作業で割ったものを磨き、端部を揃えて積層したものです。ガラスの奥行きは150mm程度あり難易度の高いものでしたが、ガラス職人と施工者の丁寧な仕事により実現できました」と振り返る。
また、抹茶色と共に、デザイン上の大切なキーワードとなったのが水の流れだ。「地杉を用いたカウンターの一端には、ワインクーラーとして使う石製の立ち手水を据えました。地杉の天板は、手水鉢から湧き出る水の流れと波紋の広がりを杢目に見立てて選びました」と榊田。産地が有名かどうかに関わらず、目が素晴らしい材は多くあるので、最近はそうした材を見立て、生かすことを楽しんでいるともいう。ディテールへのこだわりを聞くと、「左官仕上げでは、見切りの扱いが意匠上とても重要です。この抹茶色の土壁では、刃掛け(はっかけ)の素材に神代杉を用い、見切りが一分程度(約3mm)と極力細く見せる納まりとしています。そうした、数奇屋の感覚や職人の感性が現れた部分は、ぜひ現地で見てもらいたいですね」と語ってくれた。
(文中敬称略)
DETAIL
所在地:群馬県前橋市本町2-2-15 白井屋ホテル内(グリーンタワー1階)
運営:白井屋ホテル株式会社
用途:特別個室(会食や催事など)
竣工:2020年12月
床面積:25.9m2
仕上げ材料
床:玄昌石
壁:土壁(抹茶色)+ 刃掛け・神代杉 ファサード/割肌フロートガラスt19mm積層
天井: AEP塗装仕上げ
什器:カウンター/天板・地杉無垢材浮造り仕上げ