nishinakasu TAKESHI DOROKAWA by Takasu Gaku Design and Associates

Restaurant | Fukuoka, Japan

nishinakasu TAKESHI DOROKAWA | TGDA | photography : Ikunori Yamamoto

nishinakasu TAKESHI DOROKAWA | TGDA | photography : Ikunori Yamamoto

 

DESIGN NOTE

  • シェフの手元を見せる7席のオープンカウンター

  • 料理からインスピレーションを得た“伊と和の融合”

  • 期待を高めるアプローチ空間

EN

photography : Ikunori Yamamoto

words : Reiji Yamakura/IDREIT

 
 

福岡を拠点に、インテリアとプロダクトデザインを手掛けるTGDA(Takasu Gaku Design and Associates)の高須学が設計した、福岡・西中洲のレストラン。

高須にデザインコンセプトを尋ねると、「シェフの泥川武士さんがつくる料理が好きで、1号店のイタリアンレストラン『メルモーゾダ・ドロカワ』に10年近く通っていました。その間、日本の食材を多く採り入れるようになり、器が和食器へと徐々に変化していく様を感じていたので、今回、この2号店の設計依頼を受けた時には、その料理から得たインスピレーションを元に、“伊と和の融合”をコンセプトにデザインに取り組みました」と語る。

また、依頼時に決まっていたテナント区画は制約が多かったが、弱点をストロングポイントに変換する仕掛けを考えたと振り返る。「とても細長い区画で、給排水設備の理由から客席を奥にしか配置できないことがわかりました。しかし、あえてアプローチを長く取り、梁下の寸法が低いことを逆手に取ってにじり口のように設えるなど、客席に至るまでを楽しんでもらえるような設計をしています」。見せ場となるカウンター席については「イタリアンの調理方法をベースにしたフルコースをシェフが一人で提供する、という運営方針は決まっていたので、そこから7席のシェフズカウンターを中心としたデザインが導かれました。カウンター配置にはいくつかの候補がありましたが、引き戸を開けると正面に泥川さんがいて、そこに視線が集中する、いわば“王道”のレイアウトを採用しています」と語る。

厨房内と客席の高さ関係については、客席からシェフの包丁さばきが間近に見えるように、食事をするカウンターよりも5cm上に作業台の天板を設けることをまず決め、そこを起点にすべての寸法が決められた。厨房内のレイアウトは、一つひとつの所作にこだわりのあるシェフの要望を聞き、どちら向きに回転したときにどの器具が必要かといった細部まで緻密に設計したという。最新型の多機能な厨房機器ではなく、昔ながらのコンロの火口と自然対流オーブンのみで時間を掛けて調理をする泥川シェフのスタイルから、シンプルな器具のみで構成された美しい厨房が実現している。

また、客席カウンターの、下側を面取りした船底型ではなく上向きにテーパーを取ったディテールの意図を尋ねると「この店舗では、アプローチから客席までの期待感を高めるため、緊張感のあるデザインをしました。しかし、すべてをシャープにつくり込むと気を許せる余地がなくなってしまうので、手を触れる場所は快適なものにしたいと考え、このカウンターのエッジは、腕を置いた時の感触が良く、見た目にも優しい印象のデザインとしています。トイレの壁を一部曲面にしたのも緊張を緩和させようという意図で、そうした感覚の違いをディテールの操作でつくろうと試みました」とのこと。

インテリアの素材では、菌によって自然に生まれた黒い木目が個性的なスポルテッドウッドであるトリュフビーチをエントランスに、より優美な印象のイタリアンウォールナットをカウンターまわりに用い、一方では、シェフの故郷である福井県越前町の手漉和紙を壁と天井に貼るなど、まさにイタリアと日本のテクスチャーが融合した仕上げを見ることができる。さらに、オリジナル製作した二種類のスタンド照明や、鳥居をモチーフにしたオーク無垢材のベンチなど、来店者の目に留まる部分を一つひとつ丁寧にデザインしたことで、設計者の考え方があらゆるタッチポイントに反映された空間となっている。

(文中敬称略)

 

DETAIL

カウンターのエッジは、上向きにテーパーを取り、手触りよく見た目にも柔らかく仕上げている。5cmカウンター面から上げたワークトップは、継ぎ目を見せないよう大判セラミックストーンを使用。照明や空調設備の配置にも、細心の注意が払われた

カウンターのエッジは、上向きにテーパーを取り、手触りよく見た目にも柔らかく仕上げている。5cmカウンター面から上げたワークトップは、継ぎ目を見せないよう大判セラミックストーンを使用。照明や空調設備の配置にも、細心の注意が払われた

梁下であることを逆手にとり、高さ1100mmのにじり口のようにデザインした店内への入り口。天井は波型にカーブしたデザインとしている。

梁下であることを逆手にとり、高さ1100mmのにじり口のようにデザインした店内への入り口。天井は波型にカーブしたデザインとしている。

店内への期待感を高めるためにあえて長くとったアプローチ。壁には、菌が入った部分の木目が黒くなったスポルテッドウッド「トリュフビーチ」を使用している。天井まわりは越前の手漉和紙貼り。

店内への期待感を高めるためにあえて長くとったアプローチ。壁には、菌が入った部分の木目が黒くなったスポルテッドウッド「トリュフビーチ」を使用している。天井まわりは越前の手漉和紙貼り。

オーク無垢材のオリジナルベンチは、鳥居からインスピレーションを得た形状。左手に見える長方形の照明もこの店舗のためにデザインされたもの。

オーク無垢材のオリジナルベンチは、鳥居からインスピレーションを得た形状。左手に見える長方形の照明もこの店舗のためにデザインされたもの。

スタンド照明はステンレスパイプで製作したオリジナル。

スタンド照明はステンレスパイプで製作したオリジナル。

 

CREDIT + INFO

名称:nishinakasu 泥川武士

設計:Takasu Gaku Design and Associates 高須  学

照明計画: BRANCH LIGHTING DESIGN  中村達基

グラフィックデザイン:24D  ニシダトシカズ

音響デザイン:寺岡真央

突き板:安多化粧合板

和紙:滝製紙

施工:長崎船舶装備


所在地:福岡県福岡市中央区西中洲5-6

経営:泥川武士

用途:レストラン

開業:2019年9月

面積:52.95m2

仕上げ材料

床: アプローチ/既存モルタルの上アクアカラー塗布 客席/煉瓦タイル

壁:トリュフビーチ突き板練り付け(安多化粧合板)突き付け貼り 手漉和紙(雲肌仕上)貼り(滝製紙)

腰壁:ジョリパット(アイカ工業)仕上げ

天井:手漉和紙(雲肌仕上)貼り(滝製紙) カウンター上/イタリアンウォールナット突き板練り付け(安多化粧合板)

カウンター:天板・イタリアンウォールナット突き板練り付け(安多化粧合板)

+大判セラミックストーン(デクトン)

家具:アームチェア/RINN(アルフレックス) オリジナルベンチ/オーク無垢材(製作  nomade design)

オリジナル照明/ステンレスパイプ + ステンレスメッシュ + LED (製作  chavie+ひかり)

 
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