THE REIGN HOTEL KYOTO by TERUHIRO YANAGIHARA STUDIO
Kyoto, Japan
DESIGN NOTE
アイデンティティーを表現するコンテンポラリーアート
高低差を巧みに生かしたレイアウト
photography : Takumi Ota
words : Reiji Yamakura/IDREIT
TERUHIRO YANAGHIHARA STUDIOがロビーとレストランの設計と、ホテル客室のデザイン監修を手掛けた「THE REIGN HOTEL KYOTO」が、2021年に京都駅の南側、十条にオープンした。
令和元年となる2019年に構想された同ホテルのネーミングは、治世を表す単語 reignをもとに名付けられたものであり、コペンハーゲンのデザイン事務所All the Way to Parisが手掛けたグラフィックには、reignとrainの言葉遊びから、雨のイメージが視覚化されている。
「京都のホテルに滞在する人は、観光の予定などでとてもせわしなくしているんですね。そこで、客室で過ごす時間やホテル内での体験を大切にしようと考え、心地よく感じられるカラースキームやマテリアルなどのディレクションを行いました。また、ホテル1階には、北欧のビュッフェのようなスタイルでゆったりと朝食をとってもらい、居心地が良くてつい長時間過ごしてしまうような場所をつくりたいと考えました」と、柳原照弘はホテル全体のコンセプトを振り返る。
ホテル1階には、レセプション機能と約40席のカフェレストランが計画された。もともと、前面道路に高低差がある敷地だったことで、レセプションよりもレストランの床を1200mm低くすることで、限りのあるスペースながら客席と通路をガラス1枚で区画し、平面上の狭さを感じさせないレイアウトの工夫がなされている。また、レストランのペンダントランプは、ベンチ席上には真鍮製の器具を、さらにカウンター席上では真鍮製ボディの上部に黒い大理石を合わることで、レセプション側から見下ろした時にも繊細さを感じられる意匠が施された。1階の内装では、モルタル仕上げに一部、銅板やアサメラの無垢材を組み合わせることでシャープな印象をつくり、さらにホテルとしてのアイデンティティーを表現する大切な要素としてアートが用いられた。
「京都のホテルというと、伝統的な京都らしさを追い求めた施設が多いのですが、ここは地元に人にとっても刺激がある場所にしたいと考え、京都在住のアーティスト・八木夕菜さんに依頼し、このホテルのために写真を撮ってもらいました」。京都を訪れる観光客は日本各地を巡る人も多いことから地域は限定せず、日本の自然を題材に、抽象度が高くオーガニックな写真を依頼したという。大胆に風景を切り取ったコンテンポラリーな作品群は、ライトボックスのように内部に照明を入れた状態で展示されており、昼夜でまったく異なる表情を見せてくれる。
開業がコロナ禍と重なり、ビュッフェのオペレーションを一緒に考えるなどの苦労はあったというが、「八木さんに依頼した写真の他にも、友人でもあるコペンハーゲンのAll the Way to Parisにグラフィックを依頼したり、クヴァドラのテキスタイルやスカゲラックの家具を使うなど、これまで築いてきた国外のクリエーターやメーカーと連携できる状況を、思い切り楽しみながら進めることができたプロジェクトでした」と柳原は全体を総括してくれた。
(文中敬称略)
DETAIL
CREDIT
名称:THE REIGN HOTEL KYOTO
設計:
建築 竹内誠一郎建築研究所(基本企画) ALCOM(設計監理)
内装(ロビー、レストラン)、客室ディレクション TERUHIRO YANAGIHARA STUDIO 柳原照弘 寺前星那
照明計画:ニューライトポタリー
アートワーク:八木夕菜
ロゴ・グラフィックデザイン:All the Way to Paris
施工:建築 山庄 内装 キクスイ
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所在地:京都府京都市南区東九条柳下町67-1
経営: ALCOM
開業:2021年2月
面積:1F 434.86m2
用途:ホテル
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仕上げ材料
床:モルタル+ステイン塗料
壁:モルタル 柱まわり銅メッキアングル
天井:AEP
レストランカウンター:コンクリート打ち放し + 天板・研ぎ出し
レセプションカウンター:アサメラ無垢材
照明器具:真鍮 + 大理石製オリジナルペンダントライト(ニューライトポタリー)
家具:ベンチシート/クヴァドラ製ファブリック張りベンチシート テーブル/天板・ホワイトオーク チェア/RESULT CHAIR(HAY)