ARM Chair/FLOW by DAISUKE YAMAMOTO

Sustainable Project

ARM Chair/FLOW | DAISUKE YAMAMOTO | photography : Masayuki Hayashi

 

DESIGN NOTE

  • LGSだけでつくられたアームチェア

  • 店舗の内装材を再利用するコンセプト

  • 解体現場で組み上げられる最小限のデザイン

EN

photography : Masayuki Hayashi
words : Reiji Yamakura/IDREIT

 
 

インテリアデザイナーの山本大介による、店舗に使われる資材を再活用するプロジェクト“FLOW”は、商業空間の平均寿命が5年と言われる現在、スクラップ&ビルドへの疑問から生まれた。山本は、ファッションの世界でサスティナブルな活動に取り組むbeautiful peopleのクリエイティブアドバイザーとしてブランドに包括的に携わる中で、「beautiful people 渋谷パルコ店」(2019年)、「同 ジェイアール名古屋タカシマヤ店」(2020年)で、解体後に再利用できる資材のあり方を意識しながら設計するというチャレンジに取り組んできた。その後、2カ月間限定で営業した「beautiful people pop-up store unseen archives during the pandemic」(2021年)では、エンツォ・マーリが1970年代にDIYできる椅子として図面を公開した「sedia 1」をPOP-UPストア解体時にLGSを用いて製作(詳細はインタビュー参照)して注目を集めたが、同じくLGSを用いて新たにオリジナルデザインされた椅子が、この「ARM」である。

 

エンツォ・マーリによるDIYできる家具の作品集「autoprogettazione?」(1974年刊行)の椅子「sedia 1」の図面をもとにLGSを用いて組み立てたモデル。beautiful peopleのPOP-UPストアのために制作された

 

sedia1と同様に棒状のLGSを面材として扱ったARMのデザインについては、「現場にあるLGSとジョイントとなる端部のランナー、ビスだけを使い、最小限の部材で椅子として成立する形を探りました」と語る。座面や背を固定する部分では、短時間で組み立てられるようできる限り部材を減らし、かつ必要な強度を得られる接合方法を検討したという。

この椅子の成り立ちを理解するためは、ただ、LGSを使って美しい椅子をつくろうとして生まれたデザインではなく、店づくりの段階で解体後の建材の行方を考えながら設計し、運用するサイクルの中で想起されたことと、通常であれば産業廃棄物になる使用済みのLGSから解体現場でsedia1を組み上げた経験が生かされているという背景を忘れてはいけない。

これまでの活動を振り返り、山本は「“FLOW”は、サスティナブル建材つくるような大きな開発ではなく、身近な範囲で、5年、10年後の未来を想像しながら自分たちの手でやり切っていくというプロジェクトです。LGSを選んだのは、解体時から逆算するような空間設計を行う中で、廃棄せずに活かし、マテリアルサイクルを生み出すという考え方に合致する素材だったからです。現状への問いかけからスタートした、とても小さな取り組みですが、小さなことの積み重ねが世界を変えていくと思うので、こうした動きが広まっていくことに期待しています」。

椅子の形にしたことで、より共感を得られるようになった “FLOW”のプロダクトは、ヨーロッパなど日本以外からの問い合わせも増えており、ギャラリーとの連携を模索中という。また、現在は椅子だけでなく、シェルフや照明器具のデザインも進行中とのことで、2022年10月14日から11月3日の会期で予定されているDESIGNART TOKYOの展示「流動するマテリアルサイクル "FLOW"」で、これまでの成果が発表される。

(文中敬称略)

 

DETAIL

LGSは軽量鉄骨とも呼ばれる、主に内装工事に使われる下地材。表面は塗装せず、亜鉛メッキされた建材そのままの表情を見せている

素材には、すべて20mm × 40mmのLGSを用いた。できるだけ少ない部材で、かつ強度を保つことのできるミニマルな構造でデザインされている

LGSの小口には、ランナーと呼ばれるコの字型のパーツをすべて被せることで、切断面を隠し、安全性を高めた

 

CREDIT

名称:ARM Chair / FLOW

デザイン:山本大介デザイン事務所 山本大介 肥田栄輔

製作:近河一喜 鈴木良和

素材:LGS(20mm×40mm)

サイズ:W610  D520  H860  SH420

 
 

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