EDITION 01 ARMCHAIR/SIDE CHAIR by Teruhiro Yanagihara Studio
EDITION 01 ARMCHAIR/SIDE CHAIR | Teruhiro Yanagihara Studio
DESIGN NOTE
アームから背までを一直線とした、後ろ姿の美しいオリジナルチェア
高度なクラフトマンシップで仕上げられたディテール
座面に柾目材を用いた上質な素材使い













photography: Teruhiro Yanagihara Studio
words : Reiji Yamakura/IDREIT
Teruhiro Yanagihara Studioを率いる柳原照弘さんがデザインを手掛けた、木製のオリジナルチェア。座面の広いアームチェアとシンプルなアームレスタイプの2種類があり、これらはともに、2021年にオープンした、エルメス製品のリペアやケアサービスに特化した店舗「エルメス アフターセールスカウンター」のインテリアデザインを彼らが手掛けた際に、その空間のためにデザインされたものだ。
空間に対しては、日本の歴史的背景をもとにしながらヨーロッパの美意識と融合するデザインを提案し、接客時の重要なタッチポイントとなる椅子については、店舗のコンセプトに沿ったオリジナルであるべきだと考えたという。「この店舗では、職人とカスタマーの接点をつくり、エルメスの誇るクラフトマンシップを伝えていくという役割があったので、そのクラフトマンシップを自分たちなりに解釈して、空間の設えに生かそうと考えました。エルメスというブランドは、最上の素材に対してクラフトマンシップでさらにその価値を高める、という製品づくりをしているので、家具においても、ただ座りやすい椅子をつくるのではなく、素材の存在を感じることができて、かつ素材自体が美しく見える形状を探っていきました」。エルメスのプロダクトと同様に革素材を使う選択肢は考えなかったかと尋ねると、「どんなデザイナーでも、エルメスの最上級の革を使えばきっと良いものがつくれると思います。しかし、今回は国内のプロジェクトで、せっかく僕たちが依頼をされたので、日本のアイデンティティーが何かということをふまえた上で、国産の木材で美しいものをつくりたいと考えました」と柳原さん。
デザインの意図について柳原さんはこう語る。「店内でお客さんが椅子を認識するのは後ろからなので、後ろ姿が美しい椅子を目指しました。着物姿のイメージで言うならば、アームチェアの背は“うなじ”にあたる部分なので、そこを徹底的に美しいものにしよう、と。座り心地を追求すると、背もたれはアームよりも上に伸びていく形状が一般的ですが、この椅子では、アームから背までを一直線にしたいと考え、その上で座り心地を確保するために、背の部分は下側にわずかにふくらませたデザインとしています」。上端が一直線となる後ろ姿にこだわったために、ユニークな形状の背、傾きのある脚、座面、という三つのパーツが複雑な角度で3次元的に接することになり、経験豊富なクラフトマンにとっても極めて難易度の高い製作過程になった。「最初に提案した時は、これはつくれないとクラフトマンに言われるほどだったのですが、伝統的な差物の技術と、機械加工では到底できない細部の調整を繰り返すことで実現することができました」と柳原さんは振り返る。
広島県のケヤキ材を用いたアームレスタイプの「EDITION 01 SIDE CHAIR」。後ろ脚と座面の接合部は、埋め木の代わりに銅製のパーツを用いてアクセントとしている
アームチェア、アームレスタイプともに、貫(ぬき)を設けずに最小限の部材を組み合わせたシルエットからは、ところどころにエッジが立った形状と、細すぎない部材が印象に残る。素材使いや表面の仕上げについては、「構造的にはもっと細くしたり薄くしたりすることもできます。木材には木表と木裏、小口など異なる表情があるのでそれらを生かし、木らしい存在感を見せるために直線的でマッシブな形状としています。木製の椅子で座り心地を追求すると、コーナーを丸くした曲線的なデザインとなりますが、素材の良さを残すために、やすり掛けではなく鉋仕上げを選択し、最終工程でやわらかさを出す一歩手前の状態をあえて狙いました」と明かしてくれた。
エルメスに納品された椅子は、すべて広島産のケヤキ材を採用。座面にはすべて柾目の一枚板を使う贅沢な仕様となったが、木取りにまでこだわったのは、エルメスの革の使い方や、素材を徹底的に管理するというブランドの思想をこの椅子にも採り入れたかったからだ。家具メーカーと連携すれば品質の高いものができるが、今回は自分たちがクラフトマンと手を組むことで、量産品ではできないことを追求したかったという柳原さん。「木材というのは、樹種さえ指定すれば常に同じ素材が手に入ると思っている人が大多数かもしれませんが、実際には、産地、山のどんな場所で育ったのか、切り出した時期などによって大きな違いがあり、木工のクラフトマンの方たちは、そこまでを気にしながら素材を使っています。デザイナーは素材の先にある背景を知らなければいけないし、僕らはそうしたプロセスでものをつくっていきたい」と今後への展望を語ってくれた。
高い技術を持つクラフトマンとのコラボレーションにより、量産品の家具づくりでは選択できない手法を積み重ねて完成したこの椅子は、Teruhiro Yanagihara StudioによるSTUDIO EDITION/TYSの第一弾として現在購入することができる。また、今後、STUDIO EDITION/TYSは02、03と続いていく予定というので、新たなプロダクトにも期待したい。
DETAIL
栗材を用いた「EDITION 01 ARMCHAIR」のディテール。前脚の一部は座面内に食い込むように設計されている
座面と前脚の接合部分。無垢材の座面の木目が前脚との接合部まで連続していることがわかる
座面の太腿の当たる前側とお尻の当たる後ろ側の曲率が異なるカーブは、数種類の鉋を駆使して木工職人が丁寧に仕上げることで、なめらかに繋がれている
CREDIT
名称:EDITION 01 ARMCHAIR/SIDE CHAIR
設計:Teruhiro Yanagihara Studio 柳原照弘
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素材:
ケヤキ無垢材オイル仕上げ +銅パーツ
オーク無垢材オイル仕上げ+銅パーツ
クリ無垢材オイル仕上げ+真鍮パーツ
(樹種は ケヤキ/オーク/クリ から選択可)
※ ご注文については、 VAGUE KOBE(https://tystudio.fr/vague/)までお問い合わせください
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