HOUSE IN KITASANDO by Permanent

Tokyo, Japan

HOUSE IN KITASANDO | Permanent | photography : Kenta Hasegawa

 

DESIGN NOTE

  • 住み手の自由度を高めた“余白のある家”

  • 古びた躯体と新設部分とのコントラスト

  • 余計な要素を丹念に消したミニマムな構成

EN

photography : Kenta Hasegawa
words : Reiji Yamakura/IDREIT

 
 

東京を拠点とする設計事務所、Permanentの竹内雅貴が全面改装のデザインを手掛けた、集合住宅の3階に位置する住居。コーポラティブハウスとして1969年に建てられた建築内の一室は、正方形に近い矩形で三方向に窓のある好条件だったため、インテリアの計画ながら区画を敷地のようにとらえてデザインを進めたという。

施主からの要望を尋ねると「デザインについて細かい要望はありませんでした。機能面では、玄関を入ったらすぐにウォークインクローゼットと浴室があり、帰宅後にお風呂に直行できる家にしたいということ、お子さんのために将来的には分けることのできる子供部屋のスペースが必要、ということだけを求められました」と竹内は振り返る。

デザインの考え方については、「アートディレクターを職業とするお施主さんだったので、レコードやアートなど趣味のコレクションや、本、雑誌を数多くお持ちでした。また、ご自宅には、子供たちが手作りしたシャンデリアや落書きなどもあり、完成された部屋では、彼ららしいものが置けなくなってしまうため、まず、“余白のある家”をつくろうと考えました。デザインについては、できる限りシンプルに。ただ、シンプルにし過ぎてはつまらないので、室内に入った時に全体が把握できないよう、あえて死角をつくることで、広がりを感じさせたいとも考えました」と語る。

リノベーションの計画では、古い躯体の表情に魅力を感じるという竹内は、荒々しさのある躯体をそのまま見せながら、そこに白いボリュームを加え、「古びた躯体と、新たに加えた部分とのコントラストをつくり出した」という。白い壁は、陰影が美しく見えるように、硅砂を混ぜてざらつきのあるテクスチャーを採用。また、玄関横の外壁に備え付けられていた、宅配用のミルクボックスも残し、壁仕上げを剥がした室内側からはコンクリートに穴をうがった状態をそのまま見せている。リビング中央にあるカウンター上の照明器具は、素地のスチールをH型に組み、その下側にライン照明を仕込んだオリジナルだ。スチールの溶接跡をそのまま見せるラフな仕上げと、両端の精度高く仕上げたオーク材との対比は、インテリア全体のコンセプトと合致するものだ。

 

外壁に穴を穿ち、備え付けられていた玄関横のミルクボックスは室内側からそのまま見せている

エントランス横のスペースには飾り棚を設けた。下部には収納と電源が用意されている

 

設計時の苦労を聞くと「余白をつくるために、天井、壁の余計な要素を消す必要があり、設備のダクトや配線を見せないことにかなり気を使いました」という。リビング中央ではスポットライトを取り付けたダクトレールが見えるだけで、設備配管は新設した壁内に隠したり、梁の裏を這わせたりと細やかな配慮が徹底されている。また、コストを抑えるため、一部に既製品の建具と建具枠を用いたが、無骨な枠の存在をできるだけ感じさせないように、枠の周囲に壁面のボードを被せ、さらに壁面を建具の色とぴったり合わせることで、3段の段差が規則正しく連なった特徴的な見栄えを実現している。

最近、実際に暮らしている様子を見てうれしくなったという竹内は、取材の最後にこう付け加えてくれた。

最近訪れた際に、実際に暮らしている様子がとても良く見えたという竹内は、最後にこう付け加えてくれた。「あまり多くを用意しないほうが住み手の考えで自由に使えてよいだろう、という考えで設計しましたが、余白がある空間というのは、住む人によっては使いづらいかもしれません。しかし、ソファが無くても縁側のような小上がりにクッションを置けばソファになるし、ダイニングテーブルを置かずに、ガステーブルと一体となった大きなカウンターでは食事やお子さんの勉強ができ、さらにはパーティーなどでも活用できます。そうした使い方は、お施主さんと設計段階で共有できていましたし、今の自由にアートなどが置かれた状態が、ものが無い竣工時よりもしっくりきていると感じました。ご自身の好きなものを自分らしくしつらえることのできるお施主さんだったので、この余白がうまく使えているのだと思います」。

(文中敬称略)

 

DETAIL

カウンター上のオリジナル照明は、素地のスチールを溶接跡をそのまま見せている。両端は染色したオーク材を使用

ガステーブルを備えるカウンターは、食事にも子供の勉強などにも利用できるものとして設計された

バルコニー手前には縁側状の小上がりを設け、座ることができる。また、バルコニーの床は小上がりと同じ高さとした。この段差に家族が並んで座って朝食を取ることもあるという。天井にはダクトレールが2本通るのみで、徹底的に配線を隠す設計をしたことですっきりとした印象を実現している

既製品の建具枠の意匠を隠すように、枠の手前に同色で仕上げた壁面のボードを一段ずらして貼ることで、規則正しい段差のディテールとしている

リビングの一角に設けられた、こもることのできる小部屋

将来、壁を立てて区切れるように計画された子供部屋

 

CREDIT

名称:House in Kitasando

設計:Permanent 竹内雅貴

照明計画:Filaments inc.

グリーン:Tan

スチール製作:SANO IRON WORKS

ファブリック:マナトレーディング

施工:Studio inc.

所在地:東京都

用途:住居

竣工:2020年10月

床面積:93.3m2

仕上げ材料

床:オーク材フローリング 一部、ラワン合板w300板張り

壁:硅砂等混入EP特殊塗装 一部ラワン合板貼り

バスルーム壁:モルタル左官 + 撥水材塗布

天井:既存

ダイニングカウンター:オーク材突き板

キッチン造作:オーク材突き板 + 天板オーク無垢挽き板 t4

特注ペンダント照明:スチール溶接 + オーク材染色の上ウレタンクリア+ LEDライン照明

キッチンカウンター天板:人工大理石 t20

小上がりベンチ:モルタル金鏝仕上げ + クリア塗装

 
 

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