ENTWINED MATTERS by PAN- PROJECTS

Installation | Valga, Estonia

ENTWINED MATTERS | PAN- PROJECTS | photography: Yuta Sawamura

 

DESIGN NOTE

  • 廃棄物をマテリアルとして捉え直すアプローチ

  • 現地で自作した、原初的なロープ

  • 歴史的建築を生かした空間構成

EN

photography: Yuta Sawamura
words : Reiji Yamakura/IDREIT

 
 

「Entwined Matters」は、ロンドンを拠点とする八木祐理子さんと高田一正さんの2人が率いる建築デザインスタジオPAN- PROJECTSが、エストニア南部の街Valgaで発表した、布を再生したプロジェクト。これは、European Capital of Culture Tartu 2024 * と連携し、Valgaで実施された建築家を対象とするレジデンシープログラム VARES(Valga Architecture Residency)にPAN- PROJECTSが選定され、Valgaに滞在しながらつくりあげた作品であり、「know the ropes」と題したインスタレーションで発表された。

布地を使った経緯を尋ねると 「私たちは、Architecture of By-productsと呼ぶ、リサーチ主導型のプロジェクトに継続的に取り組んできました。これはBy-productsという名の通り、廃棄物とみなされたもの(=プロダクト)を都市の副産物と捉え直し、その素材のストーリーを新たに建築や空間に活かしていく活動です。古紙を用いた「Paper Pavilion」(2017年/デンマーク)や、廃棄される漁具をアップサイクルしたダイニングテーブル「mum」(2022年/日本)なども、この一連のシリーズとして手掛けたものです。今回のレジデンシープログラムでは、Valgaにゆかりある素材を使い、街や建築との関係性を表現したいと構想していました。素材に関しては、これまでは日常的な活動から生まれる副産物を用いることが多かったので、今回は地域の産業から出てくる廃棄物を扱ってみたいと考え、主催者に相談したところ布が見つかりました」と八木さんと高田さんは振り返る。

その後、実際の制作に先駆けて現地に用意されたのが、地域内の服飾工場から出る大量のメリノウールの端切れだった。「レジデンシープログラムの期間は1カ月で、最初の2週間ほどはリサーチに費やしました。大きなロールから機械で切り抜いたオフカットが大量にあり、それぞれ違う形をしているので、どうすればこの素材に何かしらの形を与えることができるだろう、ということを考えていきました」。Architecture of By-productsでは、素材を活かす"手法"を見出すことが何より重要だという。「建築が特殊なものになり過ぎている時代の中で、できるだけ簡単に、誰にでもできる手法に落とし込んでいくことが、このArchitecture of By-productsのシリーズでは一番大事なことだと僕たちは考えています」と高田さんは語る。そして、2週間ほどのリサーチを経て、実現可能な手法として選ばれたのがロープだった。

「布のリサイクル素材というと、細かく裁断し、再構築してつくられたものが数多くあります。それは素晴らしい方法なのですが、私たちは布ならではのクオリティーを保った状態のまま使えたら、より良いのではないかと考えました。ロープというのは、布を一方向に捻っていくだけで簡単につくることができます。一定方向に捻った3本をまとめて逆方向に捻ることでお互いの力が拮抗して安定し、接着剤をいっさい使わずに、弱い布地からでも強い1本のロープができあがる。さらに3本のロープに逆の回転を与えていけば、内部に回転力を溜め込んでいき、塊のようにもできる。ロープをつくったことのある人には当たり前のことかもしれませんが、そうした現象に感嘆しながら制作を進めていきました」と八木さんは当時の思いを語る。自ら手を動かしながらのリサーチを経て、2人はシンプルな自作の治具とインパクトドライバーを使って1週間ほどで十分なロープを縒り上げた。

 

外観。上階の窓越しや、屋外にもロープの一部が見える

 

今回のインスタレーション会場となった建築について尋ねると 「街の中心部にあるこの建物は、かつての町役場でした。火災後に立ち入り禁止となり放置されていたのですが、立地もよく、僕たちの展示をきっかけに街の人がこの素晴らしい建築に興味をもってもらえたらいいなと思い、この場所を選びました。展示にあたっては、建築自体が文化遺産だったので天井に穴をあけるようなことができず、もともと照明を吊っていたフックなどにロープを掛けたり、床の一部に並べたりしていきました」。「ロープは人類が生み出した最初期のプロダクトの一つです。ロープがなければピラミッドもできなかったし、航海にも出られなかったでしょう。そうした歴史的な意義を参照しながら、大量にでる布の廃棄物を再利用するプロセスを、誰もができる手法で民主化しようと試みたのが今回のプロジェクトなのです。Entwined Mattersは、何か特定の形を持つものではなく、ローマテリアルの一つだと僕たちは捉えています」と高田さんはプロジェクトを総括してくれた。

オフカットの布からロープへと転換していく過程と、歴史的空間と対話するような展示手法には、「建築はアートであるべき」と語る2人の建築に対する考え方が色濃く表れている。廃棄されるものの中に、そのマテリアル自体が持つ物語性を尊重しながら潜在的な役割を見出していく彼らの自発的な活動「Architecture of By-products」。このエストニアでのインスタレーションは、ヨーロッパのキュレーターたちから高い評価を受け、来年開催予定のエキシビションに参加するきっかけにつながったという。

 

DETAIL

天井から吊ったものや床に並べたもの、さらには屋外フェンスに絡めるなど、建築空間と対話するようにロープを配したインスタレーションが展開された

 

CREDIT

名称: Entwined Matters

デザイン:PAN- PROJECTS 八木祐理子  高田一正 

オーガナイザー:VARES

プロジェクトパートナー:Tartu 2024, European Capital of Culture

コラボレーター:Aclima

制作:PAN- PROJECTS & VARES

所在地:Valga, Estonia

展示期間:2024年8月〜

用途:インスタレーション

素材:オフカットテキスタイル

 

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