KAIBOKU by CASE-REAL
Sushi shop | Fukuoka, Japan
DESIGN NOTE
オリジナル制作した漆塗りの握り台
ヒノキ材を枠を設けたピクチャーウィンドー
緻密にデザインされた狭小リノベーション
photography : Hiroshi Mizusaki
words : Reiji Yamakura/IDREIT
日本料理店「海木(かいぼく)」の“だしいなり”専門スペースのための改装プロジェクト。改装時(2016年)には、奥のスペースは日本料理店として使われていたが、現在は、だしいなり販売をメインに業態変更し、だしいなりづくりの厨房として利用されている。
この空間で目を奪われるのは、オリジナル製作した、“だしいなり”専用の漆塗りの握り台だ。寿司職人が作業をしやすい傾斜をつけた天板。汁気を含んだ“いなり”を扱うために、その出汁の通り道を考慮したスリットが手前側に設けられており、厨房のシンク上に置けば、スリットを通して水分が排水される。いなり寿司づくりの工程を丁寧に検証し、そのプロセスを美しく見せることに注力した作業台が、この空間の核となっている。また、その寿司づくりを見せるために傾斜の付けられたファサードの大開口は、ヒノキを贅沢に用いたフレームを通して職人の舞台を街ゆく人に見せる。
視線が集中する職人の手元に置かれるオリジナル製作の艶やかな“漆箱”は、二俣の細部へのこだわりが詰まったデザインと言える。建築、インテリア、家具から手のひらに収まるプロダクトまで縦横にそのクリエイティビティーを発揮する二俣ならではの、細部への執着、空間デザイン、屋外との関係といったスケールを異にする眼差しが一点で交わったプロジェクトである。また、この作業台は、店内での使用のみならず、出張調理の際にも利用できるように、持ち運びを考慮したデザインとなっている。
屋外からもよく見えるカウンターにはイチョウの無垢材、店内床と外壁の足元には御影石が用いられた。
(文中敬称略)
「だしいなり 海木」の漆塗りの握り台のデザインプロセスと、細部へのこだわりをCase-Realの二俣公一さんに聞いたインタビューはこちら「Interview with KOICHI FUTATSUMATA / Case-Real —part 2 」
DETAIL
CREDIT
名称:だしいなり海木
設計:ケース・リアル 二俣公一 大仁田雄輝
施工:クレアプランニング
照明計画:モデュレックス福岡 佐藤政章
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所在地:福岡県福岡市中央区渡辺通
竣工:2016年
面積:19.08m2 (改装部分のみ)
用途:飲食店
仕上げ材料:
床/御影石 カウンター天板:イチョウ無垢材