COYANE by DO.DO.
陶磁器の産地として知られる波佐見町にある、陶磁器のギャラリー兼ショップ「ŌYANE」(2016年開業)に併設された、フォーを提供するレストラン「COYANE」。デザインは、ŌYANEと同じく、DO.DO.が手掛けた。ショップを訪れるお客さんにもっとゆっくり滞在してほしいというオーナーの思いをもとに、同じ敷地内にあるイベントスペースの大屋根を小さくした形状で、外部に対して開かれた空間が計画された。
デザインの意図をDO.DO.を率いる原田圭に尋ねると「開放的な気持ちのよい空間にしたいと考え、ŌYANE側は6枚の大型引き込み戸とし、北側の窓もフレームレスで全開できるよう設計しました。稲がたなびく季節には窓外に素晴らしい景色が広がり、また、遠くには地域の小学校を望むことができるので、波佐見らしい田園風景を店内にいながら感じることができます。素材は、トンネル用に開発した波佐見焼タイルが大量に余っているというので見せてもらったところ、視認性を高めるために通常の白よりさらに『白く』仕上げたという美しいものだったので、これなら来店者に西海陶器らしさを伝えることができると考えメインマテリアルとして店舗全体に使うことにしました」とのこと。
計画当初は、客席の半分ほどを屋外テラス席にするアイデアもあったが、強風への配慮として壁を建て、天候に応じてフルオープンにできる引き込み戸を採用したという。内外の壁に加え、店内のビッグテーブルにも同じトンネル用タイルを貼り、他にはビーチ材のテーブル天板やキッチン周りのグレーの壁など、色を抑えつつテクスチャーの異なる素材が厳選された。
「この地にすでにあったものを手掛かりに、広がり、繋がるデザインを試みた」と原田が振り返るように、西海陶器の陶磁器のプレゼンテーションなどにも活用ができ、ŌYANEとともにブランドの魅力を発信するレストランとなった。
(文中敬称略)
DETAIL
写真右手の、大きな屋根を掛けた屋外のイベント用広場を含む、ギャラリー兼ショップ「ŌYANE」(2016年開業)と隣接するように、左手に計画された建物がレストラン「COYANE」
内外の壁、テーブルの天板には、トンネル用に開発されたという白いタイルを全面に用いた。内壁は、外壁がそのまま繋がったような印象とするため、外壁と同じく縦芋目地貼りにしている。
エントランスを入って左手に設けられた、キッチンを向いたカウンター席。グレーの椅子は座面と同色のグレー塗装としている。
グレーの椅子は、全体のリズムはそろえつつ、それぞれの席の個性を表現するため、ビッグテーブル席用(写真中央)、窓際のカウンター席(写真左奥)、キッチンに向いたカウンター席用と、背もたれの高さを変えた3種類がデザインされた。窓際カウンター席用は視線を遮らないように最も背が低く、一番背の高いビッグテーブル用は天板下に背がちょうど納まる高さとしている。
エントランスと客席の間に設けた腰壁は、来店時に店内と奥の開口まで見える期待感を保ちつつ、着席時に人の出入りが気にならない高さとして、1250mmに設定された。
エントランスを入って左手のエリアは、落ち着ける場所としてベンチシートと、2方向に背もたれのあるオリジナルソファを設けた。このエリアのみ、ビーチ材のテーブルを採用。
平面図
所在地:長崎県東彼杵郡波佐見町折敷瀬郷2204-4
経営:株式会社 西海陶器
用途:レストラン
開業:2020年8月
面積:139.74m2
仕上げ材料:
外壁/トンネル用波佐見焼タイル
内壁/トンネル用波佐見焼タイル 一部モールテックス
什器/トンネル用波佐見焼タイル カウンターテーブル・モールテックス
家具/ビッグテーブル・トンネル用波佐見焼タイル、テーブル・ビーチ材ウレタンクリア仕上げ