SOCO HAUS KORAKUEN by Mitsui Fudosan Residential + hitotomori
Tokyo, Japan
SOCO HAUS KORAKUEN | Mitsui Fudosan Residential Co.,Ltd. + hitotomori | photography : Hiroki Kawata
DESIGN NOTE
利用者にインディヴィジュアルなくつろぎを提供する共用ラウンジ
既存の大理石を活かしながら、様相を一変させたエントランス
NEW LIGHT POTTERYによる特注照明























photography : Hiroki Kawata
words : Reiji Yamakura/IDREIT
東京都文京区に建つ、かつて社員寮だった建物をコンバージョンした、一人暮らしの女性向けのシェアレジデンス「SOCO HAUS KORAKUEN」のデザイン。設計監修とデザイン監修は、長坂純明さん率いる ひとともり が手掛けた。
依頼の経緯を長坂さんに尋ねると、かつて、金沢のホテル「香林居」で協働した水星 inc.の代表、龍崎翔子さんがSOCO HAUSのクリエイティブディレクションを担当しており、龍崎さんからの声掛けでプロジェクトに参加したという。すでに設計施工の会社が参画していたため、長坂さんはデザイン監修者という立ち位置から、個室内を除くすべての空間デザインを俯瞰し、設計者や施工者とのコミュニケーションを取りながらデザインを進めていったという。
デザインコンセプトについてはこう語る。「ここでは、強いコンセプトの言葉を定めて、それを徹底していくような進め方は採らなかったのですが、ミニマルなデザインを基本としながら、“押し付けがましくない豊かな空間”をつくりたいと考えました。また、“本物を使うことから逃げない”というのも、常に心掛けていたことです」。本物を使う、という姿勢がよく表れているのが、エントランスホールにあった既存の大理石の壁だろう。「使われている石の素材自体が悪いわけではないので、壁のあり方を変えれば良い」と考えた長坂さんは、天井をスケルトンとし、コントラストの強い黒い鉄骨階段は淡いグレーに変更。オーク材の壁と階段は白く染めることで、柄に個性のある大理石を残しながらも心地よいニュートラルなトーンを生み出すことに成功している。
存在感のある大理石を残したエントランス。既存の開口は真鍮板でふさいでいる
階段まわりは既存の意匠を活かしながら、素材感や色みを操作することでニュートラルな印象としている
また、今回の共用部デザインでとても興味深かったのが、ラウンジ隣り合って座る際の距離感のとらえ方だ。シェアレジデンスの共用部とはいえ、誕生会などのパーティーが頻繁にあるのはちょっと煩わしいのでは、と感じていた長坂さんだが、こうした場面では会話しないでしょうね、といった利用者と同世代である龍崎さんからのリアルな意見が大いに参考になったという。「このラウンジでは、隣り合う場所に座っていて空間はシェアしながらも、それぞれがインディヴィジュアルである、という状態をつくろうとしています。そのために、セットで使う前提のソファをあえてバラバラに置いてみることで、近い距離に居ながらも互いに関与しないで過ごすことのできる環境をつくりました。例えば、ホテルのラウンジなら細かく用途を設定して計画しますが、ここでは適度なラフさがあり、利用シーンを限定しないような雰囲気にしたかったのです」と長坂さん。実際にここでくつろぐ居住者に対して、大きな影響を与える家具については、若い時には買えなくても、いつか手に入れたいと思ってもらえるような、質の高い物を選ぶという意図から、デンマークのアンティークチェアやマルニ木工のイージーチェアなどが選ばれている。
越前瓦タイルを天板に用いたローテーブル上には、NEW LIGHT POTTERYによるオリジナル照明を配した
このレジデンスの意匠照明は、NEW LIGHT POTTERYが担当しているが、ひとともりのコラボレーションに対する考え方もユニークだ。「こうだと決めつける方法だと、でき上がるものの可能性を狭めてしまうし、僕らが想像していない答えを常に求めているので、協力者には建築のコンセプトを明確に伝え、それに対してどう考えるのかを聞くようにしています。このラウンジでは、全体の光のポジションを考慮した上で、片方にはペンダント照明を吊るので、こっちでは広いテーブルの真ん中に置いてみましょう、という最高の提案をしてもらい、テーブル上のライトが実現しました」とNEW LIGHY POTTERYの永冨裕幸さんとのやりとりを振り返る。
ここはあくまで住宅であり、美しい家をつくる、という意識のもと、ひとともりらしい編集感覚を発揮してまとめ上げた空間は、機能的な収納を備えたキッチンスタジオやトレーニングルームなどを過不足なく揃えることで、現代的な単身者スタイルを求める女性にとって、デザイン性とユーザビリティーの両面で魅力的な選択肢となっている。
DETAIL
バイブレーション仕上げの真鍮を用いたエントランスのディテール
ブラケットライトやペンダントなどの意匠照明はNEW LIGHT POTTERYが手掛けている
左上に見える十四面体のスピーカーはlistudeの「sight」。右奥の陶器製スツールはNOTA&design、無垢材のコーヒーテーブルはSTUDIO Khiiの梅本敏明さんによるもの
手すりにはラタンを巻き柔らかな印象としている。シームレスに繋いだ壁と天井は、今回の改修で新たにデザインされた部分
CREDIT
名称:SOCO HAUS KORAKUEN
クリエイティブディレクション:株式会社 水星
設計監修・デザイン監修:ひとともり
設計施工:株式会社GOOD PLACE
照明:NEW LIGHT POTTERY
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所在地:東京都文京区
事業主: 三井不動産レジデンシャル株式会社
(SOCO HAUS https://www.soco-haus.com/ )
竣工:2024年2月
延床面積:2508.83㎡
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仕上げ材料
床:既存コンクリートの上防塵クリア塗装
壁:オーク突き板(不燃処理) 一部カチオンしごきの上防塵クリア塗装 ガラス部分・フィルム(ブラウン)貼り
天井:オーク突き板(不燃処理)
造作ベンチ:モルタルの上防塵クリア塗装
手すり:既存手すりの上ラタン巻き
家具・音響設備:ローテーブル天板/越前瓦タイル貼り コーヒーテーブル(STUDIO Khii) スツール(NOTA&design) スピーカー(sight/listude)
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