ALSO MOONSTAR by TORU SHIMOKAWA architects

Footware store | Fukuoka, Japan

ALSO MOONSTAR | TORU SHIMOKAWA architects | photography : Koji Fujii

ALSO MOONSTAR | TORU SHIMOKAWA architects | photography : Koji Fujii

 

DESIGN NOTE

  • “霰こぼし”の敷石で仕上げたフィッティングスペース

  • ブランドの真摯なものづくりを伝える素材選び

  • 手間を掛けた職人技術の集積

EN

photography : Koji Fujii

words : Reiji Yamakura/IDREIT

 
 

建築家の下川徹が設計したムーンスターの旗艦店「ALSO MOONSTAR」。下川は、1873年の創業以来、久留米の自社工場で靴をつくり続けている同社の、ものづくりに触れる場に相応しい空間を目指したという。

随所に日本らしさを感じる理由を尋ねると、「日本的なものを目指したわけではありません。日本建築の基盤である、大工、左官、庭師を主体とした本質的な取り組みの結果そのようになったのだと思います。ムーンスターの歴史ある工場を訪れると、建築の経年には圧倒的存在感がある。その中で数百人の職人が丹念に靴をつくる情景は心に残り、商品となる靴の背景を深く知る機会となりました。私が体感した工場の空気感を直接ショップで表現することは浅はかであり、本物には到底及びません。背景を精神的に伝える空間をつくりたいと考えました。そこで、ムーンスターの真摯なものづくりへの姿勢と同じように、手間をかけた本質的なつくりを試みました。素材すべては、職人が時間と手間をかけて生み出した量感あるもので、それらが共鳴する様は人の情緒的な感覚に響きます」と下川は語る。

竣工までの苦労を聞くと、手間の掛かる職人仕事の連続だったと下川は振り返る。「内装工事ですが施工に半年を要し、フィッティングスペースの、“霰こぼし”(あられこぼし)と呼ばれる敷石は、桂離宮のアプローチでも用いられている庭師の最高峰の仕事です。自然の川石の形状がピタッと合うものを選び抜き、削ることなく極力目地が小さくなるよう合わせていくもので、経験豊かな職人が1日で300mm角程度しか進まない、大変手間の掛かる技法です」。時間を経て丸みを帯びた川石を職人がひとつひとつ敷き詰めた床に、靴を脱いで上がっていただき、それを足裏で感じながら歩き、商品を試着してもらう一連の流れは、商品とこのショップの接点として相応しいと考えたという。

正面奥が、床を「霰こぼし」で仕上げた、靴を脱いで上がるフィッティングスペース。手前には沓脱石を配した。

正面奥が、床を「霰こぼし」で仕上げた、靴を脱いで上がるフィッティングスペース。手前には沓脱石を配した。

また、天井と壁はシームレスに続く、左官職人による土佐漆喰研ぎ出し。ひときわ目を引く、鮮やかなブルーの陳列台は、「空間の最奥にあり茶室でいう床(とこ)のような格式のある場所に、ムーンスターのコーポレートカラーを人造研ぎ出しのテラゾーとして用いました。ムーンスターは元来、体育館シューズに代表される学校に寄り添った企業です。そうした背景から、学校でよく見かけた人造研ぎ出し仕上げや、校門付近に頻繁に植えてあるのを見るソテツを選定しました」。

売場の天井と壁には、赤松材を用いた。「通常は下地に用いられる野縁材ですが、一本一本相決りし、表面を仕上げたものです。天井と壁の目地を徹底して通すことで圧倒的な面とし、商品を引き立たせる背景に徹する存在としました。人は表面からは見えない素材の厚みを感じるもので、薄っぺらい材料ではなく本物の厚みを感じさせるものにしました」。

また、陳列台の腰には、型枠として靴のソールが使われている。その意図を聞くと、「ソール自体も天然ゴムをベースとして自社工場で製造しており、それを建築素材として使用できないかと考えました。ALL WEATHER・GYM CLASSICというムーンスターの主商品のソールを型枠としてコンクリートを打設し、その天端は研ぎ出すことで骨材の断面を平滑に現しました。また、ソールの原材料となる天然ゴムは素材として陳列台としてウィンドウ面に据えた。

陳列棚の側面に、ソールにあるMADE IN JAPANの文字が転写されて見えるのは「こうした細部にお客さまの発見があっても良いと思った」からだ。また、コンクリートは現場の生の雰囲気を残すため、型枠の歪みによる波打ちがあって良いと現場に伝えたという。

この空間には、さまざまな素材が使われているが、下川は「断面を見ればモノが本物か否か判ると思っているので、ここではコンクリート以外にも、木、左官、石、鉄、陶板などの断面を微かに感じさせ、本質性を伝えようと試みた」とその理由を語る。

「ものづくりの姿勢を精神的に伝える空間をつくりたい」と設計者が意図した通り、手間を掛けてつくり込んだ空間に、ムーンスターの技術やアイデンティティーが散りばめられ、手触り、足触りを含め、この場の体感を通してブランドのメッセージを強く印象づける空間となっている。

(文中敬称略)

 

DETAIL

陳列台の側面は、スニーカーのソールを型枠としたコンクリートで仕上げられた。一部には、ソールに表記されたMADE IN JAPANの文字が反転して見える。また、陳列台の天端は研ぎ出し、商品を並べる部分には陶板を用いるなど、様々な素材や仕上げが組み合わせられている。

陳列台の側面は、スニーカーのソールを型枠としたコンクリートで仕上げられた。一部には、ソールに表記されたMADE IN JAPANの文字が反転して見える。また、陳列台の天端は研ぎ出し、商品を並べる部分には陶板を用いるなど、様々な素材や仕上げが組み合わせられている。

庭師による、自然石を隙間なく敷き詰めた「霰こぼし」で床を仕上げたフィッティングスペースには、ムーンスター のコーポレートカラーである鮮やかなブルーのテラゾーによるディスプレイ台が設けられた。壁と天井は土佐漆喰の研ぎ出し。

庭師による、自然石を隙間なく敷き詰めた「霰こぼし」で床を仕上げたフィッティングスペースには、ムーンスター のコーポレートカラーである鮮やかなブルーのテラゾーによるディスプレイ台が設けられた。壁と天井は土佐漆喰の研ぎ出し。

赤松を用いたショップ部分の壁と天井は、目地を通すことに配慮して丁寧に仕上げられた。

赤松を用いたショップ部分の壁と天井は、目地を通すことに配慮して丁寧に仕上げられた。

H鋼を受ける根石に人吉川石を用いた柱まわりのディテール。床は三和土洗い出し、木部の壁下に見えるコンクリート部分は、天端は研ぎ出し、側面はビシャン仕上げ。

H鋼を受ける根石に人吉川石を用いた柱まわりのディテール。床は三和土洗い出し、木部の壁下に見えるコンクリート部分は、天端は研ぎ出し、側面はビシャン仕上げ。

ソールの原材料となる天然ゴムの塊は、ディスプレイテーブルとして用いた。

ソールの原材料となる天然ゴムの塊は、ディスプレイテーブルとして用いた。

 

CREDIT + INFO

名称:ALSO MOONSTAR

設計:TORU SHIMOKAWA architects  下川徹

照明計画:山川幸祐

サイン:THIS DESIGN 定松伸治

大工:坂本健治

左官:三宅洋児

庭師:山口陽介


所在地:福岡県福岡市中央区薬院3-11-22

経営:株式会社 ムーンスター

用途:物販店

開業:2020年6月

面積:138.84m2 

仕上げ材料

床:三和土洗い出し
巾木:コンクリート(天端研ぎ出し、側面ビシャン仕上げ)
壁・天井 : 赤松小角材相決り目透し張り t=45
根石:人吉川石 H型溝切り
柱:H鋼黒皮蜜蝋仕上げ

腰壁:ソール型枠コンクリート打放し
陳列:焼締陶板敷き、コンクリート研ぎ出し、ラワン無垢板、天然ゴム、ベルトコンベア 

〈フィッティングスペース〉
床:霰こぼし
壁・天井:土佐漆喰研ぎ出し
床板:ムーンスターブルー人造研ぎ出し

 

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