NUNOUS by Seishoku
Upcycled material
DESIGN NOTE
規格外品の布をアップサイクルした新素材
積層した布による天然石のような表情
photography : NUNOUS
words : Reiji Yamakura/IDREIT
NUNOUS(ニューノス)は、岡山県を拠点とする染色加工会社「セイショク」が、規格外品の布地を活用しようと開発した、独特の有機的なパターンに特徴のあるアップサイクル素材だ。
同社代表の姫井明は、開発のきっかけをこう語る。
「私たちは、月間100万mほどの布の染色加工を手掛けているのですが、毎月、相当な量の布地が規格外品となってしまいます。人件費や燃料、染料を使って染めた布を捨てなければいけないのはもったいないし、廃棄するにも費用が掛かる。高い品質基準から外れて価値が無いとされているが十分に使えるロスファブリックを使って何かできないか、と考えたことが始まりでした」。
開発を担当したNUNOUS事業部の西崎誠一郎は、「布を布のままで使っては、繊維業界でシェアを取り合うだけで意味がないので、まったく別の分野で活用できれば、新しい市場を開拓できるのではないかと考えました。そこから、固めて板にするというアイデアが生まれました。始めのうちは、各種の接着剤を試しましたが加工性が悪く、岡山県工業技術センターに相談したところポリマーの使用を提案され、新しい成形方法を開発。固めることに成功しました。また、素材を切断した時の断面が綺麗に見えることに気づいたのが、2014年頃のことです」と振り返る。
そこから、現在の模様を具現化するまでには、さらなる試行錯誤があった。「当時、布を粉砕してつくる吸音材のフェルトなどはすでにリサイクル素材としてあったので、私たちは異なる方向を目指し、布を固めた素材の意匠性をポイントにしたいと考えました。そこで、岡山県立大学のデザイン学部と連携し、卒業制作に使ってもらうなどして、さらにテストを重ねました。その過程で、布を重ねた方向に垂直に切るのではなく、木材でいう板目のように、積層方向に並行してスライスする時に現れる美しいパターンに着目したのです」(西崎)。
布地を水平に積み重ねた時に、自然にできる“たわみ”が、切断した時に独特の柄として現れるのだ。技術面では、ブロック状の塊から突き板のように加工できたことが、実用性のある素材化へのブレイクスルーだったという。
そして、2020年4月に、NU=新しい、NUNO=布、US=明日から、「NUNOUS」(ニューノス)と命名して正式にリリース。現在、板状のプロダクト「STONE」と、シート状の「SKIN」の2種類が用意されており、最大サイズはSTONEが450mm角、厚さ48mm(最薄は4mm)、SKIN縦450mm、横225mm、厚さ1mm(最薄は0.3mm)だ。STONEは、建築家の板坂諭からの声掛けにより、彼がデザインした、社会へのメッセージを込めた椅子「Stump chair」の素材に使用され、「DESIGNART TOKYO 2020」で注目を集めた。
今後の展開について尋ねると、「当初は国外販売を計画していましたが、この時勢により現在は国内で、建築やインテリア、プロダクトの分野で認知を広めようとしているところです。地域に根差す布地などを使うこともできるので、その意匠性を生かし、アートパネルや什器に使ってもらいたいですね。SDGsへの取り組みが求められる今、布のアップサイクルは、繊維業界だけでなく社会にとって必要なことなので、NUNOUSで新たな市場を開拓し、木材やレンガのように当たり前の素材の一つになるよう広めていきたいと考えています」と姫井と開発チームの西崎、佐賀根理沙の3人は語ってくれた。
NUNOUSは、現代生活において避けて通れない、廃棄物の削減に取り組み、また同時に、オリジナリティーを望むデザイナーの要望にも応えるユニークなマテリアルだ。
(文中敬称略)
DETAIL
CREDIT + INFO
名称:NUNOUS
製造・販売:セイショク株式会社
素材:ロスファブリック(規格外品の布地)+ポリマー
最大サイズ:
STONE/450mm角、厚さ48mm(最薄は4mm)
SKIN/縦450mm、横225mm、厚さ1mm(最薄は0.3mm)
カラー:ライトグレー、ブルーグリーン、ライラック、ベージュ、グレイッシュグリーン、グレー、ライトネイビー、ネイビー、ブラック、デニム(インディゴ)