柔らかい陰翳の在るところ by Midori Uchida
東京造形大学 造形学部デザイン学科 室内建築専攻
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光について興味を持ったのは、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を読んだことがきっかけだった。本書では、日本にある様々なもの(例えば、屏風、羊羹、お椀など)は薄暗く、陰翳のある空間でこそ美しく見えるのだと述べられていた。それまで光についてあまり考えてこなかった私は、筆者の光に対する多様な言語表現に強く感銘を受けた。
本研究では、照明の歴史や自身の光に関する体験を基に、「日本らしい光」とは何か考察する。そして私自身が考える「日本らしく美しい光」を実際の空間に表現することを試みる。
研究を通し、日本の空間における「暗さ」や「陰翳」は「素材の魅力を引き出すもの」であると考えた。暗い空間に身を置くと目の前のモノに集中しやすくなり、様々な表情に気が付きやすくなると感じた。この気づきから、日本らしく美しい空間には必ずしも「暗さ」が必要なのではなく、素材の魅力を引き立てるような「自然な明るさ」が必要なのではないかと考えた。
自然な明るさの中にある明るいところと暗いところが「陰翳」になり、素材の様々な表情を引き立てる。そして「陰翳」は空間を構成する要素として馴染んでいく。日本らしい空間では、光と光を受ける物が別々ではなく、混じり合いながら互いを引き立てているように思う。このような、自然な明るさから生まれる陰翳が空間に馴染んでいく様相を「日本らしい光環境」と捉え、実際にその陰翳を体験できる場を目指して制作した。
空間のコンセプトは「障子の拡張」である。一般的な障子の寸法や厚みを拡張し、光を受ける面を大きくすることで、多様な光の姿を観ることができる。巨大な和紙の塊が空間に浮かび、光、風、鑑賞者などと関わることでひとつの景色を生み出す。
展示物は、ボール紙で組んだ骨組みに和紙を貼った箱を制作した。その時、一面だけ和紙を貼らない面を設け、箱の内部まで光が入り込むようにしている。これを「光を掬う箱」と名付けた。計189個の箱が壁になり、太陽の光を受けて様々な表情をみせる。箱を傾け、微妙にずらして設置することで、より複雑に光と和紙が関わり合う。
これは、光の多様な姿を味わうための装置である。
words: Midori Uchida
CREDIT
作品名:柔らかい陰翳の在るところ/A Place of Light and Shadow
氏名 :内田 碧
学校名:東京造形大学 造形学部 デザイン学科 室内建築専攻
卒業年:2026
応募カテゴリー:インスタレーション