DIG THE LINE BOTTLE & BAR by Puddle
Kyoto, Japan
DESIGN NOTE
覆うではなく、“寄生する”というデザインコンセプト
階段状に8本のハンドルが並ぶオリジナルビアタップ
顧客を誘導するカウンターデザイン
photography : Takumi Ota
words : Reiji Yamakura/IDREIT
かつての京都中央電話局の建物を一部保存しながらリノベーションした複合商業施設「新風館」にオープンした、ボトルショップを併設したクラフトビールバー「DIG THE LINE BOTTLE & BAR」。設計は、同系列の「BEFORE 9」(京都・烏丸御池、2016年開業)、「ANOTHER 8」(東京・目黒、2017年開業)に続き、Puddleが手掛けた。店名は、クラフトビールづくりの拠点を見出し、つないでいくという同店のコンセプトに由来しており、設計は“ライン”の存在を意識しながら進められたという。
エントランス正面に位置する円弧を描くカウンター内には、この店舗のアイコンとも言える、長さを階段状に違えた透明アクリルのハンドルを付けたビアタップがデザインされた。これは姉妹店と素材を変えながら共通させた意匠であり、「DIG THE LINE」では、一部を黒く染色した八角形断面の透明アクリルが使われている。
カウンターを円弧型にした理由を設計者の加藤匡毅に尋ねると「通りに対して全面開放できないロケーションだったため、どうやって外部から店舗の顔を認識してもらうか、そして店内に入った直後に何を見せるかに配慮しながら、お客さんの動き方についてさまざまな仮説を検証し、人が自然とカウンター沿いに歩いていけるような曲面とした」と言う。また、デザインの前提として「新築の商業施設内であることを逆手にとって、A工事の仕上げを覆うという一般的な方法で内装をつくるのではなく、既にあるものに対して“寄生していくデザイン”をキーワードに開発を進めた」と振り返る。
その結果、石膏ボード貼りの壁は、表面を仕上げずにそのまま露出し、外周部の柱まわりでは、足元だけ三方にガラスブロックを積んで小テーブルとして活用するなど、ラフな仕上げを残し、躯体に寄り添うようなディテールが生まれた。また、コントラスを強く意識したという各部の素材については、ビアサーバーに芦野石、カウンター腰や家具などの木部には杉、金属部分には、わずかに玉虫色の光沢があるクロメートメッキが用いられた。
最先端のヨーロッパのクラフトビールに加え、日本酒が並ぶ店内は、タップから出るクラフトビールをそのまま缶に入れて持ち帰ることのできるカンニングマシンを導入するなど、タップバーとボトルショップの利点を併せ持つユニークなオペレーションに対応した空間となっている。
(文中敬称略)
DETAIL
CREDIT
名称:DIG THE LINE BOTTLE & BAR
設計:Puddle 加藤匡毅 大滝雄二郎 篠崎茶代
照明計画:ModuleX
厨房:マルゼン サンヨー厨機製作所
音響:WHITELIGHT リバーフューズ
グラフィックデザイン:Takram
アクリル製作:ひょうどう工芸
施工:アンドエス
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所在地:京都市中京区烏丸通姉小路下ル場之町586-2
経営:株式会社 酒八
竣工:2020年5月
面積:76.57m2
用途:バー
仕上げ材料:
床:モルタル 一部切り文字+金属板(クロメートメッキ)埋め込み
壁:石膏ボード現し 一部木毛セメント板 一部ガラスブロック積み
家具:杉材積層パネル(Jパネル)+フェルト張り
什器:カウンター天板/左官仕上げ カウンター腰/杉角材 ビアサーバー/芦野石貼り DJブース/杉材積層パネル(Jパネル)+特注スピーカー(リードサウンド)