SPIC GYM by ACCA
Kamakura, Japan
SPIC Gym | ACCA | photography : Nacása&Partners
DESIGN NOTE
間接照明の光を拾う、繊細なリブ状の御影石
厳選されたカラーパレット
縦ルーバーによる、象徴的な吹き抜け空間
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photography : Nacása&Partners
words : Reiji Yamakura/IDREIT
袴田広基率いるデザイン事務所、ACCA(アッカ)が手掛けたパーソナルジム「SPIC Gym」の空間デザイン。美と健康、癒しをテーマにさまざまな事業を展開するSPICのオフィスが入るビルの地下1階に計画された。
同社のサロンやメディカルクリニックなどの設計を手掛けてきた袴田は、「鎌倉という立地ということから、“未来の健康を思考するGym”をコンセプトに、日本の美意識を体現し、利用者に生命力を与え心身ともに豊かになれる空間を目指してデザインを始めました」と語る。素材やディテールにおいては、和でも洋でもないニュートラルなテイストを企図し、内外の仕切り方や、各室の境界に曖昧なスペースを設けることに配慮したという。
「1階と地下のジムを結ぶ吹き抜けは、階段まわりにらせん状に縦格子を用い、外部との結界として象徴的な空間としました。また、ジムのエントランスには、生命力あふれるオブジェとして屋久杉の切り株を置いています。レセプションの手前には前室のようなスペースを設け、通路の突き当たりには映像モニターを設けるなど、突き当たりまで見通せず、その先に何があるのだろう、と人の気持ちに訴えかけるようなデザインを徹底しました」と袴田は振り返る。
インテリアの素材は、ホワイトオーク無垢材とグレーの御影石の二つを基調に一部ダークブラウンを加えたミニマムなカラーパレットにより計画された。特徴的な壁の天然石は、理想的な質感と陰影を得るためにわざわざ特注したものだという。「これ以上細いラインでは割れてしまうというギリギリの細さのリブを彫り込んだ御影石を使いました。オリジナルの石の表情、一部石と同色のグレーに染色した木部(建具木枠や家具)などカラーの微調整、各要素の天地のバランスなど細かい部分に時間を掛けた設計となりました」とこだわりを明かす。
必要な機能をレイアウトに落とし込みながら、出入り口を通路からセットバックさせるといった緻密な操作と、色みを統一した自然素材の使用により、凛とした空気の中で、利用者が最先端のトレーニングに集中できる環境がつくられた。
(文中敬称略)
DETAIL
表面をリブ状に加工した特注の御影石を壁一面に用いた。御影石の各部材は、天井高さや通路幅に合わせたサイズに割り付けることで、目地の通り方まで設計者がコントロールした意匠となった。また、建具枠の細さなどにもこだわり、繊細な見栄えを実現している。
表面に凹凸を付けた御影石のサンプル(写真提供/ACCA)
正面の突き当たりは、自然風景を映し出した映像モニター。奥まで見通しにくいレイアウトや、セットバックさせた入り口など、意図的にあいまいな境界をつくることで、その先に興味を抱かせるデザインを意図したという。
「重なり合う曲線美を表現し、内外との結界をつくる」ことを意図したと袴田がいう、らせん状に縦ルーバーを連続させた、ジムのある地下1階から地上2階まで三層をつなぐ吹き抜け。
所在地:神奈川県鎌倉市小町2-12-30 BMビル
経営:株式会社SPIC
竣工:2020年4月
面積:250 m2
用途:パーソナルジム
仕上げ材料:
床 / ホワイトオーク無垢材フローリング(TIMBER CREW)、エントランス・石灰岩タンブル加工(GA)
壁 / 特注リブ加工御影石仕上げ(GA) ジム内部・モルタル金コテ仕上げ、オーク材突き板貼り
天井 / オーク無垢板(TIMBER CREW)
建具(エントランス格子戸) / クリアガラス挟み込みオーク材格子 + 横桟・スチール焼き付け塗装