% ARABICA Shanghai West Jianguo Road by B.L.U.E. Architecture Studio
Shanghai, China
DESIGN NOTE
都市のインターフェイスとしての開放的なデザイン
外壁をセットバックして生み出した屋外ベンチ
内外をつなぐ前庭
photography : Eiichi Kano
words : Reiji Yamakura/IDREIT
上海の旧フランス租界地区の、美しいポプラ並木で知られる建国西路沿いにオープンした「% ARABICA」の路面店のデザイン。もともと飲食店だった場所の一部をカフェに改装した計画で、北京を拠点に活動する、B.L.U.E. Architecture Studioが設計を手掛けた。
既存の外壁を撤去し、店内のカウンターを中心にU字型のガラスウォールを立て、街に対して空間を大胆に開いたデザインは、「美しい並木に面した現場を訪れた時に最初に浮かんだアイデアで、敷地の力を100%引き出そうとしたものです。上海のような高密度の都市で、外壁をセットバックし、家賃を払っている場所をわざわざ外部として開放するのは大きな挑戦でしたが、アラビカの店舗ではテイクアウト利用が多いため、彼らなら受け入れてくれるだろうと提案しました」と同設計事務所を率いる青山周平は振り返る。
ガラス扉をフルオープンにして営業することも想定し、室内側には十分な空調を設け、さらに前面道路側の天井にエアカーテンを設けることで、屋外席でもできる限り快適に過ごすことのできる設計がなされている。ガラスウォールの正面には、ガラスを挟み込むように大小の植栽をグラデーション状に配し、さらに内外の仕上げを連続させることで、間にあるガラスが意識の中で消えるような効果を狙った。シャッター等がない外壁について防犯上の懸念を尋ねると「現在、中国ではほとんど現金を使わず、店舗に現金がないため、閉店時にはガラス扉を閉めれば足りるという考え方です。防犯カメラが備わり、キャッシュレスとなった中国の都市部では防犯への意識が変わりつつある」とのこと。
普段から、都市の理想的なインターフェイスについて、また、内と外、プライベートとパブリックの境界をデザインによってどう侵し、揺らすことができるかを考えているという青山は、この敷地においては、内外をカーテンウォール1枚で仕切るのではなく、街路と一体となり、コミュニケーションが自然と生まれるような“厚み”のある都市構造をつくることを意図したと語る。街と店との関係について尋ねると、東京の下北沢を引き合いに出し、「下北沢を歩いて楽しいのは、店先に客席や商品などが少しずつにじみ出し、各店が街に対して少しずつ小さな貢献をしているからです。それと考え方で、この店舗が通りに対して小さな貢献をすることで通りに活気が生まれ、街が豊かになることを目指しました。また、いま商業の空間に求められているのは、ただ商品を売るだけではなく、同じライフスタイル、同じ審美眼を持った人が集うコミュニティをつくることだと感じます。そこでの会話や、集う人の素敵なファッションが記憶に残る、そんな場所になって欲しいと考えました」。
「外のベンチに座ってコーヒーを飲む人が、都市の風景になってほしい」と設計者が願った小さなコーヒーショップは、大都市の中にヒューマンスケールの営みを提供するデザインにより実現した。
(文中敬称略)
DETAIL
CREDIT
名称: % ARABICA 上海 建国西路
設計:B.L.U.E. Architecture Studio 青山周平 藤井洋子 刘凌⼦ 杨易欣 川岛雅矢
照明計画:B.L.U.E. Architecture Studio
施工:上海瀚格建設工程有限公司
所在地:481 Rd West Jianguo, Xuhui District, Shanghai, China
経営:% Arabica
竣工:2019年9月
面積:50m2
用途:カフェ
仕上げ材料:
外壁/ガラスウォール 一部電動スライドドア
壁/テクスチャー塗料(白)
カウンター/コーリアン(DuPont)
ディスプレイ棚/透明アクリル 小口ブラスト仕上げ内照
ベンチ/モルタル