CASE-REAL / KOICHI FUTATSUMATA
一連のイソップの施工
ケース・リアル 二俣公一
2016年の「札幌ステラプレス」を皮切りに、「中之島フェスティバルプラザ(2017)」「香林坊東急スクエア(2017)」「金沢(2017年)」「日本橋高島屋S.C.(2018)」「大丸心斎橋(2019)」「新宿(2020)」と赤井さんには多くのイソップの設計を施工して頂きました。
赤井さんとの初仕事も札幌のイソップだったこともあり、僕にとっては特に思入れ深い仕事が多いです。中でもうち4件は石の施工が重要なプロジェクトで事前に入念な打ち合わせや下地処理、割り付け等が必要なわけですが、それら精度で問題が起きた記憶が殆どありません。回数を増すにつれ、彼の僕らの設計への理解度や意思疎通は益々精度を増し、イソップの仕事で最後に協働した新宿は、ある意味その極みだったと思います。比較的、左官仕上げを駆使する事例は多かった中、新宿では壁面に様々な曲線を用い、且つ床も同材のたたき床で表現し、更にそれらと対峙するかのような鏡面ステンレスの造作家具との組み合わせ。互いに粗が影響し易く細心の注意が必要でしたが、見事に完璧に仕上げて下さいました。左官仕事を担当した頑固な職人方への持ち前のイニシチアチブは痛快だったし、ここでも彼の施工者としての解像度の高さというか、きめ細かさが際立った完璧な施工だったと改めて今思い返しています。
だしいなり海木の施工~大阪弁と正義感と
ケース・リアル 二俣公一
2019年、日本橋コレド室町テラスで「だしいなり海木」を施工して頂いた時のこと。普段は優しい心遣いで真摯且つ真面目な赤井さんですが、とにかく仕事においては筋が通らないことや曲がったことが大嫌いでしたね。僕らが現場打ち合わせに行くと、赤井さんが気を荒立ていて、内装監理室(以下、内監)の理不尽な対応に不満があるとのこと。。。暫く現場でチェックや打ち合わせをしていると、たまたま見回りに来た内監担当者へ例のどすの効いた大阪弁で詰め寄り始めたのです。他区画で承認出している壁の下地と同様の我々の区画のそれは認められないという内容に納得がいかなかったようで、確かに内監側の筋が通っていないというもの。周囲にC工事業者も沢山いる中、大声でその正当性を訴える赤井さんの怒鳴り声に周囲も凍り付くように静まりかえり、その場を受け流そうと隣りの区画へ逃げるように移動する内監担当者を更に追い立てながら隣区でまた詰め寄る赤井さん。そして僕も設計者としてそこに追従しないわけにもいかない気分になり、つられて抗議に参戦しました。その結末が好転したかはもう覚えてはいませんが、僕の隣りで放たれる映画のセリフ宛らの流暢な大阪弁にえらく感心しながら、一緒に内監とやり合ったあの数分間の様子は今も鮮明な思い出です。彼の本気の正義感というか、潔く正々堂々と正面から向かう姿勢に多少驚きながらも更に好感が湧いた小事件でした。
STUDIO MULEの施工と自宅
ケース・リアル 橋詰亜季
私の中の赤井さんといえば、几帳面できれい好きなワイン好き。STUDIO MULEは施主が流す各国の音楽と共にワインセラーに並ぶナチュラルワインを楽しむこだわりのお店なので、大事な施工は赤井さんにお願いする事になりました。施工面においてこちらのやりたい事がすぐに伝わるうえに、細かいところまで気が利く赤井さんにはきれいに納めてくれるという安心感がいつもありました。さらに今回は、ワインに精通している赤井さんがチームにいるという観点からも心強く進められました。竣工の頃の現場でこちらがちょっとした仕上げの荒を指摘すると、「え、そこ!?そんなとこ気になるん!?」と言ったりして思いがけずな一面もあったりはするのですが。
赤井さんの細かな性格は周囲への気遣いやきれい好きな性格にも通じていると思っています。STUDIO MULEの現場確認に訪れた際、現場の仮設トイレを「こういうの見えてたら嫌やろ、隠しとけ」と現場監督に言いながらサササッとシートを掛けて隠してくれたのです。工事中の現場だからあるよね、とは思いつつも、やはり見えていて嬉しいものではないのは確か。赤井さんのきれいに仕上げられてなんぼ、だけではない一緒に仕事をする仲間としての気遣いがとても嬉しかったのを覚えています。
個人的な事にはなるのですが、築50年くらいの一軒家の自宅の改装を相談した時のこと。大家さんもここ数年はこの先何年この家を残すか不明だった為、そこまで手を入れなかった様で外壁の白壁がかなり黒ずんでいました。外壁の塗り直しについて「下に黒いのがあると思うだけで俺はいややねん」ときれい好きな赤井さんからはネガティブな反応でした。ですが私は黒ずんでいる方が嫌やわ、と思い決行。そもそも低予算でDIYの部分も多かった我が家の計画は内壁の塗装もDIYだったのですが、赤井さんのアドバイスを振り切っていたにもかかわらず「塗装はパテが8割やからね」と塗装方法の指南しがてら大好きな白パンを着て塗装を手伝いに来てくれました。そしてワガママを色々聞いてもらいながらもようやく完成した折には、お祝いのシャンパンを持って遊びに来てくれる優しい赤井さんでした。
プライベートでもかなりお世話になった赤井さんと一緒にお仕事ができたのは STUDIO MULEが最後。一緒に飲みに行きましょうと約束していたのに、コロナもあり延期したまま結局ご一緒できず仕舞いでした。ここでは書ききれないほど感謝しています、ありがとうございました。