SUPPOSE DESIGN OFFICE / AI YOSHIDA
赤井さんのこと
サポーズデザインオフィスでは、あまり細かなルールを作らないことを信条としているのだけど「業者」という呼び方をしないという暗黙のルールがあって、使うと割と厳しめに「業者じゃなくて、業者さんでしょ!」と叱られることになります。
私達は若くして独立し、経験値もなかったので頼れるのは施工者さんや職人たちだけでした。分からないと素直に相談し熱意をもって伝えれば、難しい納まりも一緒に考えてくれたし、一緒になって面白がってもらえるよう私たちも必死でした。そんな風に現場で実践のなかで多くのことを学びました。当たり前のことだけど、どんなに素晴らしいデザインもアイデアも共に作ってくれる人がいなければ形にはなりません。見よう見真似で空間をつくるしかなかった自分達にとっては正に彼らが “先生”であり完成を共に喜べる“仲間”でした。その経験から作り手へ敬意をもってものづくりをしていきたいという気持ちは強く今も変わりません。
赤井さんとの出会いのきっかけは、地元広島以外での活動が増え信頼のおける施工者さんを探していた頃です。当時、インテリアの依頼が急激に増えてきていて、勉強がてら気になる空間はなるべく見る様にしていました。そんな折、トラフさんが設計された心斎橋のイソップを拝見し、その凛とした空気感に唸りました。主に使っている材はフレキだったと思いますがその材の使い方が美しくて、、トラフさんの手腕と施工精度そのバランスが空間の魅力がぐんと引き上げているように感じました。きっと設計者と施工者が同じ温度感と熱意をもって作った空間なんだろうなと。そして後日、施工を担当したのが赤井さんということを突き止めたのでした(笑)
数年後、機会に恵まれ初めて赤井さんとお仕事をしたのが「リンカン渋谷店」です。
古いコンクリートの躯体の粗さとシャープな納まりによるコントラストが肝になる空間。そういった躯体を活かす設計は、解体してみないと分からないことが多く、躯体の状況をみながらの現場での調整毎や、設計段階では想定できない問題が現場でたくさん起こります。そんな現場でも赤井さんはたえず前のめりな姿勢。なんなら目をキラキラさせて課題を楽しんでいる様子。それが少しおかしくて、、出来ないことを並べる前にどうできるかを考える。そんな思考がうちと一緒だな、と嬉しくなったことを覚えています。
「考えることを楽しむ」そんなスタンスの人との仕事は必ず良い結果となって空間に質となり現れます。そんな瞬間がたまらなくてこの仕事を続けている。赤井さんもそうだったのじゃないかな? 仕事を私事(自分ごと)として真摯に向き合うことの大切さ。赤井さんの生き方に敬意をもっていま改めてそんなことを感じています。