TORAFU ARCHITECTS / KOICHI SUZUNO

Aesop 東京ミッドタウン店 設計:トラフ建築設計事務所 施工:アンドエス  撮影:太田拓実

 

Aesop 神戸BAL店 設計:トラフ建築設計事務所 施工:アンドエス 撮影:太田拓実

 

boy Tokyo 設計:トラフ建築設計事務所 施工:アンドエス 撮影:阿野太一

 

僕たちが赤井さんと最初に仕事をしたのは、京都にある「イソップ河原町店」でした。それまでにイソップのお店を三つほど僕らがデザインした後だったのですが、クライアントから、河原町店の施工はアンドエスに依頼したいと紹介され、そこで初めて出会いました。イソップはこれまでに6店舗を赤井さんとは一緒に手掛けているのですが、ここでは印象に残っている「東京ミッドタウン店」と「神戸バル店」を挙げたいと思います。

「東京ミッドタウン店」では、理化学用のガラス器具で知られる桐山製作所に特注した球体のガラス容器を用いたシンクをデザインしました。この時は、赤井さんと桐山製作所まで一緒に行ったことを覚えているのですが、容器内で水が噴水のように流れる様子が一つのエンターテインメントになるような店舗をつくってもらいました。「神戸バル店」では、床、壁から什器まで、レンガのような質感のモザイクタイルを使っています。ここでは、14mm角のタイルに対して幅広の6mmの目地を採用したのですが、モックアップをつくり、とても丁寧に仕上げてもらいました。施工中に現場に行くと、たいていはやり直すべき箇所を見つけたりするのですが、赤井さんとの仕事では、すでに厳しい目で一通りチェックされているので、僕らがテープを持ち出して貼るようなことはありませんでしたね。押しが強いような方では決してないのですが、淡々と、そして、常に強い意思を持って僕らの要望を聞いてくれたという印象を持っています。

最後にもう一つ紹介したいのは、裏原のヘアサロン「boy Tokyo」です。ここでは、天井の配線ケーブルの写真を選びました。こうした配線は、図面に書けるようなことではないので、事前にイメージを共有して、整然と見せたいと伝えたところ、想像以上にものすごく綺麗なケーブルが仕上がっていました。他で同じことを依頼したら、それは無理と怒られてしまうレベルだと思うのですが、赤井さんが目を光らせてくれたおかげで、この美しい配線が実現したのです。一般的には、レール上に這わせるようなものですが、ここでは一つひとつ天井に直接固定していて、後から増やしたり減らしたりできないので、見た目以上に手間が掛かっているでしょうし、赤井さんの性格がよく表れたディテールだと思います。

 

「boy Tokyo」の外観 撮影:阿野太一

 
 

また、彼らとの仕事では、施工図がすごくしっかりしていたことも記憶にあります。図面を読み込み、時間を掛けてきっちりつくっていくイソップのような施工にはぴったりだったと思いますし、リノベーション案件だった「boy Tokyo」では解体しながら考えるような部分もあったので、若干困らせてしまったかもしれません。

僕たち設計者にとっては、誰につくってもらうかというのはとても大きな要素で、最終的なイメージを共に思い描きながらデザインできるのが一番良いのです。赤井さんには、困難な依頼でも逃げずに何とかしてくれるという信頼感があり、こちらの意図をすぐに理解してくれるので、次は、どんな難しいデザインを頼んでみようかな、と思わせるような方でした。僕らの強いパートナーであり、本当に大事な人をなくしてしまったと感じています。

赤井さんはいつも、おしゃれな白いパンツを履いていた印象があるのですが、そんな白い服だと汚れちゃうでしょう?と聞いたら、現場で白くなるのでこのほうがいいんです、と笑っていました。そして、いつもアルミのアタッシュケースを持っていて、それに図面を入れて持ち帰るのですが、ある時にアタッシュケースを開けたら、そのアタッシュケースを拭くウェットティッシュだけが入っていて、本当に几帳面で頼りになる人だったことを思い出します。

トラフ建築設計事務所 鈴野浩一

 

Reiji Yamakura