TAKUMI OTA PHOTOGRAPHY / TAKUMI OTA
赤井さんとすれ違ってきた
私は空間デザインの撮影を手がけている。
施工完了が撮影の号砲ならば、施工者とは入れ違うことが宿命となる。
施工者が去るとき撮影者の仕事が始まるといえば格好のつけ過ぎだろうか。
作り手とはいつもすれ違い。
多少経験を積むようになって、施工者との接点も出来てきた。
挑戦的なプロジェクトを手がける空間デザイナー各氏がパートナーとして組む施工者は限られている。
アンドエスの赤井さんはまさにそうした施工者だ。
その後に大きな飛躍を遂げることになるブランドの黎明期に、1号店や旗艦店を多く担当なさっていた。
幸いにもそうしたプロジェクトの撮影機会をいただき、いくつかのブランドの第一章に携わることが出来た。
入れ違いではあるものの、赤井さんとの接点が多くなり、意識することが増えた。
案件が並行するほど撮影も大変ではあるが、
何もないところから作り出す立場の赤井さんが、多くのプロジェクトを相手に多忙を極めていたこと想像に難くない。
2016年の暮れ、現場のあと金沢で赤井さんが寿司に誘って下さったことがあった。
同士と思って下さったのだと思う。
それが赤井さんとゆっくり話し込んだ唯一の機会だった。次があることを疑わなかったが、永遠に叶わないことになってしまった。
現場で仕上がったディテールの数々を見ていると、これはどう作ったのだろうと思うことばかりだ。
多くが写っていそうな写真を撮ってはいるが、本当にその背景や造りに肉薄できていたか。
赤井さんが納得するものだったか。
どれも大変で面倒くさく、最高に面白い造りをしていたのだろう。もっと話を伺いたかった。